2008 Fiscal Year Annual Research Report
メゾスコピック領域の集積型金属錯体の合成と動的機能の開拓
Project/Area Number |
18205017
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 治 Kyushu University, 先導物質化学研究所, 教授 (80270693)
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Keywords | 光応答 / 金属錯体 / 磁性 |
Research Abstract |
温度、光、電場、磁場、圧力などの外部刺激に応答する機能性分子材料は、学術的視点、分子デバイスなどへの応用の観点から重要な材料である。機能性分子材料のなかでも光応答性物質が最近特に注目されている。光は物質の物理的、化学的特性を制御するために非常に有用で強力なものである。このような光を利用した光励起プロセスと多様な物性を示す遷移金属錯体とを融合することにより様々な機能性新物質を開発できる可能性がある。本研究では、Tris(3-aminopropylamine)、N, N'-Bis(3-aminopropyl)1, 3-propandiamineを配位子としたCu-Mo系集積型オクタシアノ型金属錯体を合成しその磁気特性と光物性に関し検討を行った。合成した物質はCu^<II>(S=1/2)-Mo^<IV>(S=0)-Cu^<II>(S=1/2)の電子状態を有する三核錯体である。この物質の紫外-可視(UV-Vis)吸収スペクトルを測定したところMo-Cu間の電荷移動遷移に帰属される吸収が紫外域にみられることがわかった。そこで紫外光を磁場5000 Oe、温度5Kにおいて数時間照射し光照射前後の磁化率(χ_MT値)の変化をSQUIDを用いて測定した。その結果明らかなχ_MT値の上昇がみられた。また、温度を室温付近まで上昇させたところχ_MT値が光照射前のもとの値に戻ることがわかった。χ_MT値の上昇は、以下に示す光誘起金属間電荷移動(MMCT)が起こったためと考えられる。Cu^<II>(S=1/2)-NC-Mo^<IV>(S=0)-CN-Cu^<II>(S=1/2)⇔Cu^I(S=0)-NC-Mo^V(S=1/2)-CN-Cu^<II>(S=1/2)。光照射前、Cu^<II>(S=1/2)、Cu^<II>(S=1/2)に2つのスピンが存在するが反磁性のMo^<IV>(S=0)を介しているので、そのスピン間の磁気的相互作用は弱い。しかし、光照射後、Cu^<II>(S=1/2)-NC-Mo^<IV>(S=0)においてシアノ基を介した電荷移動が起こり、Mo^(S=1/2)とCu^<II>(S=1/2)との間に強磁性的相互作用が働いたためにχ_MT値が上昇したと考えられる。
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Research Products
(5 results)