2009 Fiscal Year Annual Research Report
メゾスコピック領域の集積型金属錯体の合成と動的機能の開拓
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18205017
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 治 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (80270693)
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Keywords | 鉄コバルト錯体 / 電子移動 / 磁性 / 光 |
Research Abstract |
温度変化、光照射により分子内電子移動が誘起される新規低次元錯体鉄コバルト錯体[FeTp(CN)_3]_2Co(bpe)・5H_20を合成することに成功した。[FeTp(CN)_3]_2Co(bpe)・5H_20はLi[FeTp(CN)_3]、Co(NO_3)_2・6H_2O、1,2-Bis(4-pyridyl)ethaneを水中で反応させることで得た。単結晶X線構造解析の結果、モノクリニックでP2_1/cの空間群に属することが分かった。結晶構造は中性の[FeTp(CN)_3]_2Co(bpe)層と層間に存在する結晶水からなっている。中性の層の中で[FeTp(CN)_3]^-はCo^<II>イオンに対し二座の配位子として作用し、三つのCN基の2つでCo^<II>イオン二つを架橋している。それぞれのCo^<II>イオンはCN基の4つの窒素に配位され、二重ジグザク鎖構造を形成している。二重ジグザグ鎖はさらにコバルトのアピカル位でbpeによって配位され層状のフレームワーク構造を形成している。鉄コバルト錯体[FeTp(CN)_3]_2Co(bpe)・5H_2Oの磁気特性を測定したところ_XT値は300Kと220Kの間で一定の値を示した。しかし、2.0K/分で温度を下げると220から100Kの間で_XT値が減少し、120Kで1.90cm^3mol^<-1>Kになった。温度を上げると_XT値は増加しもとの値に戻り、わずかなヒステリシスも観測された。_XTの値から約2/3のCo^<II-HS>がCo^<III-LS>に変化したことがわかった。したがって、この変化は{[Fe^<III>Tp(CN)_3]_2Co(bpe)}・5H_2O〓{[Fe^<III>Tp(CN)_3]_<4/3>[Fe^<II>Tp(CN)_3]_<2/3>Co^<III>_<2/3>Co^<II>_<1/3>(bpe)}・5H_2Oと表現できる。温度をさらに低下させると_XT値は50Kまで一定でその後増加し9.5Kで最大値を示したあと減少した。[FeTp(CN)_3]_2Co(bpe)・5H_2Oの光応答性を調べたところ、5Kで12時間の光照射により_XT値の著しい増加が観測された。光照射後加熱すると、_XT値は最初急激に増加し9.54Kで14.4cm^3mol^<-1>Kに達した。さらに温度を上げると_XT値は徐々に減少して、約100Kで光照射前の値に重なった。すなわちこの変化は可逆であり、鉄コバルト間電子移動が繰り返し観測されることが分かった。磁気特性に周波数依存性は観測されなかった。
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Research Products
(2 results)