2006 Fiscal Year Annual Research Report
磁性半導体・半導体ハイブリッド構造におけるスピン三端子デバイス
Project/Area Number |
18206001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
新田 淳作 東北大学, 大学院工学研究科, 教授 (00393778)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 裕三 東北大学, 電気通信研究所, 助教授 (00282012)
好田 誠 東北大学, 大学院工学研究科, 助手 (00420000)
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Keywords | GaMnAs / MnAsクラスター粒子 / 磁化反転機構 / トンネル磁気抵抗 / InGaAs / スピン軌道相互作用 |
Research Abstract |
磁性半導体GaMnAsをスピン注入用の電極として用いるにはその磁区構造や反転磁場の大きさを調べる必要があり、デバイスに応用するにはミクロンサイズでの磁化反転機構の解明が重要となる。GaAs上にエピタキシャル成長した磁性半導体GaMnAsを幅1.0μm長さ5.0μmに微細加工し、磁気抵抗特性の角度依存性よりその磁化反転機構を調べた。GaMnAsは[110]方向にある一軸磁気異方性と比べて[100],[010]方向の結晶磁気異方性は10倍程度強いため、マクロな薄膜では90°磁壁による磁化反転が生じると考えられている。本実験は、微細加工を施すことにより形状磁気異方性による効果や一部の結晶方位領域では180°磁壁による磁化反転が起こりうるとの可能性を示している。 縦型スピン注入三端子素子を構成するにはGaMnAsからGaAsへのスピン信号を電気的に検出する必要がある。しかしながら、下部電極をGaMnAsとするとGaMnAs上に高温でGaAsを結晶成長することは困難であり、高品質のGaAsを得ることができない。そこで、高温での成長が可能なMnAsクラスター粒子を下部電極として用いることによりGaMnAs/AlAs/MnAsクラスタ粒子構造を作製しスピン信号を電気的に検出できるかどうか調べた。作製したGaMnAs/AlAs/MnAs構造のトンネル磁気抵抗特性はヒステリシスを示すとともに、マイナーループも観測されることからスピンバルブ信号であることを確認した。この結果は、MnAsクラスターによりスピン信号を電気的に検出することができることを示している。しかしながら、磁気抵抗変化は1%以下(温度T=4K)であり大きなバイアス依存性を示すことがわかった。今後は、GaMnAs/AlAs/MnAs構造を形成する結晶成長条件の最適化により、トンネル磁気抵抗の向上を図るとともに三端子構造の素子作製条件の検討を行う。 スピン軌道相互作用は電子スピンに対して有効磁場として作用しスピンの向きをゲート電界により変調することが可能となる。特にGaAsよりもエネルギーギャップの小さなInGaAsではその効果が顕著となることが期待される。InP/InGaAs/InAlAs非対称量子井戸構造のスピン軌道相互作用のゲート電圧依存性について弱反局在解析を用いて調べた結果、量子井戸InGaAsの井戸幅5nmと10nmでスピン軌道相互作用のゲート電圧依存性が逆になることを見出した。この結果を理解するため、ポアッソン・シュレディンガー方程式とk・p摂動理論を用いた詳細な解析を行った。その結果、5nmの量子井戸では電子波動関数がヘテロ界面に大きくなり、スピン軌道相互作用に及ぼすインターフェイス項の寄与が強く、量子井戸中の電界の寄与は弱くなる。一方、井戸幅10nmの場合には波動関数がヘテロ界面まで充分広がっていないため量子井戸内の電界によるスピン軌道相互作用への寄与が強くなっていることが確認された。この実験と解析結果は、スピン軌道相互作用を評価するのは量子井戸内の電界の効果だけでなくヘテロ界面からの寄与を含めて考慮する必要があることを示している。
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Research Products
(3 results)