2008 Fiscal Year Annual Research Report
量子ナノ構造を用いた高出力・広周波数域テラヘルツ電子デバイスの研究
Project/Area Number |
18206040
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
浅田 雅洋 Tokyo Institute of Technology, 大学院・総合理工学研究科(研究院), 教授 (30167887)
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Keywords | テラヘルツデバイス / 共鳴トンネルダイオード / 集積スロットアンテナ / InGaAs / AlAs / InP / 高調波テラヘルツ発振 / 電圧制御発振 / アレイ構造 / オフセット給電アンテナ |
Research Abstract |
本研究は、未開拓周波数であるテラヘルツ周波数帯に対して、高出力・広周波数域の発振・増幅デバイスの実現を目標として、共鳴トンネル構造を用いた発振素子の作製と特性評価を行い、本年度は以下の成果を得た。 InP基板上にGalnAs/AIAs二重障壁共鳴トンネルダイオード(RTD)と微緬アンテナを集積したテラヘルツ発振素子について、高出力化・高周波化のために必要な高電流密度のRTD層構造を、エミッタ層への高濃度ドーピングと障壁層の極薄膜化を導入して設計し、これまで報告のある中で最大のピーク電流密度18mA/平方ミクロンの値を持つRTDウェハを得た。これと低キャパシタンスのためにスペーサー層厚の最適化を行った層構造の微小面積RTDによる発振器を作製し、周波数831GHzの室温基本波発振を得た。これは単体の室温電子デバイスではこれまでで最高の基本波発振周波数である。層構造の最適化により1THzを超える高周波化が可能なことも見積もられた。また、高電流密度とオフセット給電アンテナ構造の併用により高出力化が可能なことを理論的に示し、電流密度7mA/平方ミクロンのRTDを用いて、270GHzの発振周波数において単体で150マイクロワット、直流-出力変換効率1.9%というこの周波数帯のデバイスとしては非常に高出力・高効率の値を達成した。より高電流密度のRTDを用いれば、800GHzにおいても200マイクロワット以上の高出力化が可能なことが予測され、さらに、アレイ構造を用いれば1mW以上の高出力発振器も可能である見通しが得られた。 また、多くのテラヘルツ波応用において有用な水平放射型の発振秦子を、RTDとメンブレンテーパースロットアンテナの集積構造およびその形成プロセスを新たに考案して作製し、発振周波数405GHz、出力60マイクロワットの単峰水平放射を達成した。 本研究は本年度が最終となるが、以上の結果から、RTD発振器の高出力化および広周波数域での動作に必要なデバイス構造が明らかになった。
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