2009 Fiscal Year Annual Research Report
鋼構造部材のランダム振幅下における破断変形能力の研究
Project/Area Number |
18206059
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桑村 仁 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授 (20234635)
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Keywords | 建築構造・材料 / 構造工学 / 耐震 / 鋼構造 / 安全性 / 破壊 / 溶接 |
Research Abstract |
前年度までの研究、すなわち小型相似試験体のランダム振幅における破壊実験から導かれた損傷則を実機構造物で検証するための実験を行った。試験体は、鉄骨構造物の柱-梁溶接接合部の施工で一般的に用いられている溶接仕様で製作した。実験手法そのものの妥当性を確認するために、最初にパイロットテストを行った。すると、試験体が塑性変形する過程で、フランジの局部座屈が先行し、それが横座屈を増長して試験体全体が不安定となることが判明したので、フランジの局部座屈を拘束するために梁の側面に鋼板を溶接した。これにより、破壊を再現することが可能となった。 まず、単調載荷試験と一定振幅載荷試験を行い、破断履歴の相似則(塑性率振幅と破断サイクル数の関係が1本の直線で表され、その直線勾配が不変量であるという法則)が成立していることを確認した。次に、地震波として代表的な十勝沖地震で記録された八戸波と兵庫県南部地震で記録された神戸波を用いて応答解析を行い、その応答変形をランダム振幅として与える破壊実験を同じ溶接仕様の試験体で実施した。 その結果、マイナー則(直線累積損傷則)は、小振幅波形の混在が少ない八戸波での破壊を比較的よい精度で予測できるが、小振幅波形の混在が多い神戸波では予測精度が粗く、しかも危険側の予測を与えることが明らかとなった。このことは小型相似試験体でも同じ傾向が見られたもので、今回の実機構造物で再確認されたことになる。ランダム振幅におけるこのような予測誤差の原因は、振幅の評価法にあることが推測されたので、振幅評価の手法について検討した。その結果、大振幅に混じって現れる小振幅を無視し、その前後の大振幅をさらに合算して振幅を見直すことによって、予測精度が向上することが明らかとなった。これは、破断履歴の相似則直線から明らかなように、振幅を大きめに評価すれば、破断サイクル数あるいは破断変形能力が小さめに予測されること、および小振幅波形は破断性能に対して相対的に影響が小さいことと関係している。 本研究の成果は次のような耐震設計に応用することが可能である点に意義がある。すなわち、構造物め地震応答解析によって、柱-梁接合部が経験するランダム振幅過程が分かるので、それを元に、地震応答途中で破断が起きるか否かを本研究から得られた損傷則より判定することができる。破断が起きると判定されたときは、その溶接仕様、あるいは使用鋼材を変更して、接合性能を上げる工夫をすればよいことになる。あるいは、より高度な解析プログラムを用いれば、破断した後の応答を追跡して、建物が崩壊しないことを確認することによって安全性を保証することができる。
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Research Products
(14 results)