2008 Fiscal Year Annual Research Report
スピネル型酸化物結晶における電子励起を伴う照射欠陥形成過程の原子分解能解析
Project/Area Number |
18206068
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松村 晶 Kyushu University, 工学研究院, 教授 (60150520)
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Keywords | スピネル化合物 / イオン照射 / イオントラック / 高分解能電子顕微鏡 / 電子チャンネリング分光 / 分子動力学計算 / 規則-不規則転移 |
Research Abstract |
本研究では、強い放射線照射環境で使用される材料として考えられているMgO・nAl_2O_3スピネル結晶について、最新の電子顕微鏡技術による実験と分子動力学計算によって、イオンや電子照射によって形成される構造欠陥を実験と理論計算の両面から原子分解能で解明し、電子励起過程が照射欠陥生成とその挙動に及ぼす効果を明らかにすることを目的としており、(1)イオン・電子照射に伴う照射欠陥の形成とその安定性に関する実験、(2)スピネル中の欠陥形成挙動に関する分子動力学計算機実験、の2項目を研究の主たる柱として研究を進めている。以下に本年度に得られた成果の概略を述べる。 (1)(001)面方位のMgO・nAl_2O_3(n=1.1)単結晶ディスク状試料を作製し、それに対して日本原子力研究開発機構のタンデム加速器を用いて350MeVAu^〈28〉+イオンを10^〈16〉m^-2レベルまで照射した。 (2)電子チャンネリングX線分光実験(HARECXS)により結晶サイトのカチオン配列の定量解析を行ったところ、10^〈15〉m^-2程度の照射の範囲ではスピネル構造を保ってのカチオン配列の不規則化が進むが、10^〈16〉m^-2レベルまで強照射すると4面体位置のカチオン数が減少して全体に8面体位置を専有する割合が増加することが明らかとなった。 (3)昨年度に引き続き、GULP(General Utility Lattice Program)コードを用いた分子動力学計算により、フレンケル欠陥の蓄積がスピネル結晶構造の不安定化に与える影響についての検討を進めた。筆御付近の低温では、点欠陥の蓄積により直接的に4面体位置の陽イオン占有率が低下し、結晶構造が岩石型構造に近づいていくに対して、1800K程度の高温ではスピネル構造の中で陽イオン配置の不規則化が進んだ後に、協力現象的に岩塩型構造に相転移することが示された。
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