Research Abstract |
本研究は,ソーラーセルへの適用が可能な球状Si結晶を高効率に生産するドロップチューブプロセスの確立を目的としている.この点から初年度は様々の状態からのSiメルトの噴射を行い,その結果,固液共存のsemi-solid状態からの噴射は,通常のメルとからの噴射に比べて,性状の優れた球状Si結晶の牧率が向上することを明らかにした.しかしながら,このプロセスでは,噴射可能なsemi-solid状態の実現は容易ではなく,固相の割合が大きいsemi-solid状態では噴射が困難になるなど,単結晶の比率の増加の反面,実験の困難さに伴う再現性に課題が残った.この点から19年度はsemi-solid状態に替わる状態,すなわち固相シリコンと同様に結晶化の際の核になり得る,シリコンとは異質の物質を混入させた状態からの噴射を前提に,特にその異物質の選択と添加量の最適化を検討した.この場合,混入させる異物質としては優先核生成サイトとしての働きはもとより,半導体としてのシリコンの機能を損なわないものでなければならない.この点からは異物質には(1)結晶シリコン中において電子的に不活性,(2)溶融シリコン中において化学的に安定,(3)結晶学的disregistryが小さいこと(結晶構造、格子定数等のミスマッチが小さいこと),(4)溶融シリコンとの密度差が小さいこと,などが挙げられる.これらの条件を満たす物質としては高融点の化合物半導体が対象となり,なかでもSiとの格子定数のミスマッチが小さく、また密度も近いAIPが候補になる.これらの検討を基に,AIP濃度を10^<15>/cm^3〜10^<21>/cm^3の範囲で変化させた試料において実験を実施したところ10^<16>/cm^3〜10^<17>/cm^3の場合に牧率が最も高くなることが解った.この結果は踏まえ,20年度はメルトが固化する際のAIPの働きを中心に,結晶化プロセスの解明を狙った実験を実施し,研究を総括する予定である.
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