Research Abstract |
アルツハイマー病の原因物質である42残基のβアミロイドタンパク(Aβ42)は,神経細胞毒性とともに高い凝集性を示す.昨年度までの研究により,Aβ42凝集体中には25及び26番目にターン構造をもつ非毒性コンホマーと,22及び23番目にターン構造をもつ毒性コンホマーが存在することを明らかにした.後者は,Aβ42の毒性本体と考えられるオリゴマー(3及び4量体)を形成しやすいことも判明した.そこで今年度は,Aβ42オリゴマーの構造を精密に解析する目的で,Aβ42オリゴマーをSDS-PAGEで分離し,オリゴマー画分をMALDI-TOF-MS分析した.その結果,3及び4量体のピークは全く認められなかった.これより,これらのオリゴマーは,共有結合ではなくAβ42ペプチド鎖間の水素結合によって形成されたものであることが示唆された. 昨年,マリアアザミ種子のメタノール抽出物由来のフラボノイドであるタキシフォリンが,Aβ42の凝集を顕著に阻害することを見いだした.タキシフォリンのようにo-hydroxyphenol構造を有するフラボノイド類は,容易に酸化されてo-キノン体に変換されることが知られている.そこで過ヨウ素酸ナトリウムを用いて,Aβ42存在下タキシフォリンを酸化し,凝集阻害活性を評価したところ,酸化剤の濃度依存的にタキシフォリンによるAβ42凝集阻害活性が顕著に上昇することが明らかになった.さらに,フェニレンジアミンによって,o-キノン体を捕捉することにも成功した.以上の結果より,タキシフォリンの酸化によって生じたo-キノン体がAβ42の求核性アミノ酸残基と不可逆的に結合することにより,Aβ42の凝集を阻害している可能性が示唆された.
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