2006 Fiscal Year Annual Research Report
劇症型樹木萎凋病の発病メカニズムに関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
18208015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
二井 一禎 京都大学, 農学研究科, 教授 (50165445)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 順一 京都大学, 農学研究科, 教授 (80115782)
山田 利博 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30332571)
植原 健人 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構, 北海道農業研究センター, 主任研究官 (30355458)
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Keywords | 劇症型萎凋病 / マツ枯れ / ナラ枯れ / 防御関連遺伝子 / 病原性決定因子 / フェノール性物質 / 潜在感染木 / 寄主応答 |
Research Abstract |
(i)マツ枯れ:人工接種の接種源としてマツノザイセンチュウの弱病原性系統、あるいは非病原性の糸状菌などを用いた場合の寄主応答を遺伝子レベルで比較した。両者によって、共に抵抗性が誘導されたが、その持続性は前者がはるかに長かった。このような寄主応答に伴って発現誘導される遺伝子の探索を開始している。また今年度の主目的であった、植物の病原体認識に関与するレセプターや病原体認識後の防御反応に関与する他の遺伝子についても研究が継続行中である。さらに、病原線虫側の神経伝達系に関与するアセチルコリンエステラーゼを支配する遺伝子を標的とした研究を開始した。一方、本病の防除の現場では充分な処置を施した後にも被害が再発する現象が知られている。この一因として潜在感染木の役割を提示してきたが、微量なマツノザイセンチュウ由来遺伝子を増幅する分子生物学的手法を援用することにより、健全と見えるマツ樹木中にも本病原線虫が高頻度で潜むことを明らかにした。さらに、ポルトガル産マツノザイセンチュウと日本産マツノザイセンチュウめ病原性をはじめとする形質の比較を行った。 (ii)ナラ枯れ:本病によるの枯損過程において寄主樹木が示す組織の褐変等の化学的変化を抵抗性の異なるいくつかの樹種で比較した。特に、フェノール系物質3種に焦点を絞り、その動態を時空間的に追跡している。同様の手法を用い、成木と苗木の反応の違いなどを通して枯損メカニズムの解明に向けた研究を開始している。遺伝子レベルでの研究はまだ緒についたばかりで、充分な成果は得られていない。"ナラ枯れ"と菌根共生の関係を探るべく、落葉性のコナラ・クヌギ林と常緑性のシイ林の間で、菌根性菌類の子実体発生調査を行った。偶然、調査地内に枯死木が発生したので、今後調査を継続する中で、菌根共生の働きが明らかになる可能性がある。 以上、申請研究初年度は多方面にわたる研究に一定の前進が見られたが、もっとも重要な関連遺伝子の解明に成果が得られていない。今後の課題となろう。
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Research Products
(6 results)