2008 Fiscal Year Annual Research Report
劇症型樹木萎凋病の発病メカニズムに関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
18208015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
二井 一禎 Kyoto University, 農学研究科, 教授 (50165445)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 利博 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30332571)
植原 健人 農業・生物系特定産業技術研究機構, 北海道農業研究センター, 主任研究員 (30355458)
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Keywords | マツ枯れ / ナラ枯れ / 媒介昆虫 / 亜社会性行動 / 網羅的分子同定 / 線虫体表タンパク質 / 生物防除 / 坑道内微生物群集 |
Research Abstract |
マツ枯れに関しては病原体の純系化に成功し、これにより分子生物学的な再現性のある研究が可能になった。さらに、病原線虫感染に始まる寄主-寄生者間の分子応答に関する研究を進めたが、その中でも成果が得られたのは、病原体側の感染応答であった。この研究に於いては、感染にかかわる病原体側物質を網羅的に、かつ分子生物学的に解析し、宿主樹体内で異常に増加生成される線虫表皮タンパク質を発見し、その化学的同定に成功した。寄主-寄生者間の分子応答において、この物質のエリシター作用が想定される。また、これに基づき寄主の感染応答遺伝子の探索を進めたて来たが、残念ながら、これまで寄主の感染応答遺伝子を特定するに至らず、現在も研究を継続中である。 一方、ナラ枯れに関しては媒介昆虫の役割やこの疾病に関わる微生物を研究してきたが、そこで明らかになった事実は、(1)媒介昆虫の樹体内における亜社会性行動の実態や、(2)この媒介昆虫の体内に潜み伝播される菌類の生態や、坑道内での群集構造、(3)病原菌感染後の寄主体内における二次代謝産物の動態などで、いずれも本病を理解する上で重要な新知見を加える事ができた。さらに、本病を生物学的に防除するために天敵微生物の探索を実施中であるが、これまでにいくつかの候補微生物を得る事に成功しており、今後順次その野外での防除効果を確認する予定である。 以上のように、二つの劇症型森林萎凋病の防除法確立のために必要な基礎知見を明らかにする事に成功しており、今後の未解決課題の研究遂行も併せて、これら流行病の防除法確立に貢献することが可能となろう。
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Research Products
(19 results)