2008 Fiscal Year Annual Research Report
サケの嗅覚機能を指標とした母川水識別機構に関する研究
Project/Area Number |
18208017
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上田 宏 Hokkaido University, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (00160177)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 英昭 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (70281798)
安住 薫 北海道大学, 大学院・薬学研究院, 助教 (90221720)
伴 真俊 北海道大学, 独立行政法人本産総合研究センターさけますセンター, 主任研究員 (80425462)
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Keywords | サケ / 嗅覚機能 / 母川記銘 / 母川回帰 / アミノ酸組成 / バイオフィルム / ニオイ受容体 / 嗅上皮DNAチップ |
Research Abstract |
サケの嗅覚機能を指標とした母川水識別機構を解明するため、以下の解析を行った。 1、河川水のアミノ酸組成に対するサケの嗅覚機能の解析 : (1)ヒメマス幼魚(スモルト)の電気生理学的嗅覚応答実験 : スモルトに2005年3-7月にプロリン(1μM)を2週間暴露し、2005-2007年の6月と10月にプロリンに対する電気生理学的嗅覚応答を解析した。3-6月に暴露すると2006・2007年の6月・10月には対照群に比べて有意に嗅覚応答が高く記銘されたが、7月には記銘されなかった。(2)ヒメマス成熟親魚のY字水路における選択行動実験 : 2005年3-7月に1μMプロリン(Test water)を各月2週間暴露して記銘させたスモルトを2007年10月に成熟するまで飼育し、Y字水路を遡上した個体と遡上した個体がTest waterを選択した割合を調べた。3-6月にプロリンを記銘させた成熟親魚はTest waterを有意に選択したが、7月に記銘させた成熟親魚は選択しなかったことから、ヒメマス1歳魚は3-6月に1種類のアミノ酸を記銘できることが明らかになった。 2、河川水の溶存遊離アミノ酸(DFAA)の起源の解析 : 豊平川河床に礫岩切片を沈めてバイオフィルム(様々な細菌・藻類・原生動物などの微生物の共同体)を形成させ、培養実験を行った。バイオフィルムは豊平川の河川水中のDFAAの濃度・組成とほぼ同じDFAAを産生していること、また付着藻類が産生するDFAAの組成は、藻類の種類により異なり、また濃度も低いことが解析され、河川水中のDFAAは主にバイオフィルムにより産生されていることが明らかになった。 3、サケ嗅上皮DNAチップによる水質診断法の開発 : シロザケ稚魚嗅上皮のcDNAを用いて、降河行動にともなう嗅覚系の遺伝子変動の解析を行い、変動の大きかった遺伝子の機能と働きを調べたところ、マイクロアレイ上の25の遺伝子で大きな変化(亢進・低下)が見られ、現在これら25の遺伝子の塩基配列を解析し、相同性解析を行っている。
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