Research Abstract |
樹状細胞や神経,ランゲルハンス細胞い骨細胞などは,細胞表面に多数の樹状突起「デンドライト」を発現し,デンドライトを介して多様なストレスを生体内gatewayとして受容する。細胞内では,デンドライトで受容しストレスを化学的シグナルに変換して多様な生体防御反応過程をイニシエーションする。平成19年度は,上記細胞群に於いてデンドライトを起点とするシグナルネットワークを介するホメオサーベイランス機構を解明した。神経系におけるdendriteおよび軸索終末では,ある種のストレス下でプロラクチン放出ペプチドやバゾプレッシンが産生誘導され,軸索の投射先である視床下部でノルアドレナリンと相乗的に作用する可能性が見出された。また,樹状細胞がドパミンを合成、放出し,T細胞上のD1様受容体を介してTh2細胞への分化を誘導することを発見し,神経ニューロンと同様に樹状細胞とT細胞の免疫シナプスを介して,T細胞の活性化や分化偏向を調節すること,免疫系と神経系の普遍性が存在することを解明した。皮膚樹状細胞であるLangerhans細胞は,デンドライトに発現するCXCR4を介してSDF-1を受容し,リンパ節への遊走やTh2サイトカインを産生し,T細胞浸潤を誘導することを示した。骨形成系骨髄幹細胞は,慢性荷重負荷に反応してPTH/PTHrP受容体を介してLRP5/Wntシグナルを亢進し,骨芽細胞分化を促進し,脂肪細胞分化を抑制することを示した。また,骨芽細胞ではβ1インテグリンと骨基質との接着を介してrhoが活性化され,デンドライトを有する骨細胞への分化、増殖が誘導された。一方,クロマチンプロテオーム解析として,リンカーヒストンH1と会合する分子群DNA-PK,Nucleolin,hnRNPK,PARPl,YB-1等を同定した。また,DNAダメージストレス耐性細胞では,YB-1,STAT3,ヒストンアセチル化酵素であるTip60が高発現し,損傷DNAの認識と修復,DNA修復遺伝子の発現制御などに関与することを解明し,DNAレベルでのストレス反応を明らかにした。以上,平成19年度は,デンドライトを起点とするストレスの細胞内シグナルへの変換によるホメオサーベイランス機構と共に,デンドライトを介した細胞内シグナルから細胞外への情報提供機構が明らかになり,デンドライトを起点とする双方向のシグナルネットワークが普偏的に存存することを解明した。
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