Research Abstract |
本研究の目的は,現在の分子遺伝学の最新の知見を診療に結びつける最善の方法を築きあげることにある.この課題を実現するために,1.resequencing microarrayを用いた,包括的な,変異,および,多型の解析システム,2.独自に設計した,高密度array CGHによる,欠失,挿入,重複などの染色体異常の検出システム,の2つのアプローチを進めている.resequencing microarrayについては,筋萎縮性側索硬化症,パーキンソン病,副腎白質ジストロフィー,家族性痙性対麻痺を中心に解析が進んでおり,変異,多型の網羅的検出が実現しており,孤発性の疾患の中には,一部に病因となる遺伝子変異の存在を見出している.array CGHによるアプローチでは,常染色体劣性遺伝性パーキンソン病(AR-JP)に焦点を当て,probeを100-200bpという高密度に実装することにより,欠失,重複を高感度に検出できるシステムを確立した.現在までに,AR-JP症例について,133個の欠失,あるいは,重複を同定し,そのbreak pointを塩基レベルで決定した.このような規模の欠失部位の決定は,神経疾患に限らず癌の研究などを含め過去に類のないものである.break pointの塩基配列の解析から,欠失が配列依存性に生じているのではなく,染色体上のpositionに依存する形で生じていること,創始者効果は一部の症例にとどまることから,欠失が独立に一定の頻度でpopulation中で生じていることが強く示唆されるデータを得ている.この部位は,common fragile siteと呼ばれる領域に一致することから,染色体の不安定性機構の解析という点でも重要な知見をもたらすものと期待される.
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