2006 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経系超早期の発達に影響する分子異常に着目した自閉症脳病態の解明
Project/Area Number |
18209037
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 進昌 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (10106213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 司 東京大学, 保健センター, 教授 (50235256)
笠井 清登 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80322056)
山形 要人 財団法人東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 副参事研究員 (20263262)
定松 美幸 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (90252387)
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Keywords | 児童精神医学 / 環境変動 / 遺伝子 / 脳・神経 / 発生・分化 |
Research Abstract |
(1)モデル動物研究に関して、自閉症を高率に合併する結節性硬化症(TSC)では、原因遺伝子産物TSC2の変異のため、蛋白合成が亢進していると考えられている。そこで、TSCモデルラットのEker(TSC2遺伝子の変異モデル動物)の蛋白質を同定したところ、大部分がミトコンドリア由来の蛋白質であった。TCA回路や呼吸鎖を構成する酵素が増加していたことから、TSCのシナプスにおいてミトコンドリアの増加あるいは機能亢進が考えられた。 (2)また、自閉症発症に関わる環境要因探索のために環境ホルモンの体内曝露の影響を動物実験で検討した。ビスフェノールAの新生児ラット(ヒトの胎児期に相当)への少量曝露により、多動と学習障害をきたすことを見出した。そのメカニズムとして甲状腺ホルモンおよびその核内レセプター、転写因子の変化を検討したが、一部変化は見られるものの、二次的変化と考えられた(Xu et al, Neurosci Res.inpress)。現在エストロジェンα受容体およびその関連分子の関与について検索中である。 (3)遺伝子探索については、H18年度末には罹患者のDNAサンプル数は家系サンプル240例を含む300例以上に達した。これを用いてTSC遺伝子のほか、7番染色体長腕ならびに15番染色体長腕の候補遺伝子のSNP解析を継続、7番の一部の遺伝子で有意な関連を確認した。TSC遺伝子では部分的に有意な結果は得られたが、現在これを確認中である。15番長腕領域については微小な欠損や重複とPDD発症との関連を検討するため、array-CGHによる解析を開始しつつある。 (4)臨床脳画像研究では、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いてPDDにおける前頭葉機能異常を鋭敏に反映する指標を確立した(Kuwabara et al., Behav Brain Res,2006)。また、本検査が繰り返し測定による再現性が高いことを示した(Kono et al., Neurosci Res, in press)。この指標を用いて、小児及び成人PDDの各年齢層のデータを集積し、健常者では年齢とともに前頭葉機能が発達する様子をMRSが捉えること、PDDではその発達が障害されていること、健常同胞では健常対照とPDDの中間的な機能レベルであることを見出した。
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