2007 Fiscal Year Annual Research Report
学際的総合研究による消化器癌進展の分子機構解明と予防・診療ツールの開発
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18209043
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
有井 滋樹 Tokyo Medical and Dental University, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (50151171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲澤 譲治 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (30193551)
田中 真二 東京医科歯科大学, 情報処理センター, 特任准教授 (30253420)
中村 典明 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (10372442)
田中 博 東京医科歯科大学, 大学院・疾患生命科学研究部, 教授 (60155158)
三木 義男 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (10281594)
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Keywords | オミックス解析 / cDNA Microarray / Array-CGH / 肝癌 / 再発 / ミラノ基準 / Aurora kinase B / 分子標的剤 |
Research Abstract |
本研究により以下の成果を得ることができた。 肝細胞癌患者の予後はその再発形態に依存する。そこで肝細胞癌切除後の高度再発例、いわゆるミラノ基準を超えた再発、47例(5年生存率12.7%)、ミラノ基準内再発64例(5年生存率68.6%)と無再発例の切除標本を用いてその遺伝子発現の差異をDNAマイクロアレイにより網羅的に解析した。その結果、101個の遺伝子発現パターンがミラノ基準外再発と相関し、その最も有意な遺伝子として分裂期キナーゼの一つAurora kinase B (ARKB)を同定した。免疫組織学的解析によりARKB蛋白は肝細胞癌に強く発現し、多変量解析の結果、ミラノ基準外再発を規定する唯一の独立因子と認められた。ARKBは細胞分裂に必須の多くの蛋白をリン酸化することにより、分裂のすべての時相に深く関与しており、その異常はaneuploidyを誘発し、染色体不安定性が起きることが知られている。実際、本研究においてもCGHアレイ解析によりARKB発現と染色体不安定性の有意な相関を見出した。近年、様々な癌でその異常発現が報告されているが、本結果は肝細胞癌においては初めて発見された知見である。現在、ARKBは重要な分子標的として注目されており、種々の阻害剤が開発されている。我々は、本研究の成果を踏まえて、肝細胞癌の新たな分子標的治療の開発へと進んでいる。すでにARKB阻害剤を用いて、ヒト肝細胞癌株、ヌードマウスへの肝癌皮下および肝移植モデルを用いて増殖抑制実験などに着手している。世界で年間約100万人の生命を奪っている肝細胞癌患者の治療に貢献すべく、今後も本研究を継続する所存である。
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Research Products
(4 results)