2009 Fiscal Year Annual Research Report
アジアの製造業における組織能力と製品アーキテクチャの動態的比較分析
Project/Area Number |
18252006
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤本 隆宏 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 教授 (90229047)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新宅 純二郎 東京大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (00216219)
天野 倫文 東京大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (40339205)
|
Keywords | アーキテクチャ / 産業競争力 / 自動車産業 / 電子産業 / 技術移転 |
Research Abstract |
自動車産業については、日本、中国、韓国、台湾、インド、タイの組立工場約30工場のデータベースは基本的に完成しているが、米国発金融不況の影響で、欧米企業での調査は困難となった。そこで、本年度は、アジア自動車産業に絞った分析結果をまとめたワーキングペーパーを作成する。すでに、データのクリーンアップを、日米欧共同の研究チーム(IMVP)ではじめており、本年度は成果の発表・普及に時間を割く予定である。また、緊急課題としては、米国発金融不況に対する中国政府の農村内需活性化政策が、日本など外資企業の中国市場向け製品設計、さらには中国民族系自動車企業の製品設計にどのような影響を与えるかを検討した。さらに、米国IMVPや中国・清華大学、韓国・慶北大学との共同研究も続いており、これまでの多国籍企業のアジア拠点に加えて、欧米拠点との比較分析も進めた。とりわけ、韓国・現代自動車の東欧や中国における海外展開とそれをささえる独自のものづくりについて考察した。電気自動車の技術特性・アーキテクチャ・コスト構造に関する分析、組み込みソフトウェアの標準化、米国での日本車の品質問題の分析など、新しいテーマにも適宜、我々の分析枠組みを適用している。 家電・エレクトロニクス産業に関しては、本年度に追加的な調査や分析を進め、アーキテクチャ論にもとづいたアジアの開発・生産の調査・分析についてはほぼ当初の目的を達成して終了し、製造と販売マーケティング活動との相互関係について中心的に分析を進めてきた。中国、アセアン、インド、東欧・ロシアなどの市場で、日本の製造企業がどのような製品販売戦略をとっていくかについて調査・考察を進め、論文などを作成した。また、日本とのマザー工場と海外工場との間の国際分業と連携のあり方についても調査し、ディスカッションペーパーを作成してきた。 なお、本年度は最終年度に当たるため、本年度まで行ってきた調査研究をとりまとめ、研究成果を本として出版してきた。新宅純二郎と天野倫文は今年度に『ものづくりの国際経営戦略:アジアの産業地理学』(有斐閣)を出版した。本著は上記研究目的に沿って進めた実証研究をとりまとめたものであり、アジア地域に展開する複数の産業分野を横断的に検討することで、上述の仮説の有効性を導き出している。また研究代表者である藤本隆宏も工程アーキテクチャ論を日本の素材・プロセス産業に適用した『日本型プロセス産業論』を出版した。かつて日本の化学産業は国際競争力が弱いとされてきたが、この10年ほどの間に高機能ケミカルの領域では世界随一の競争力を誇るようになった。その背後にインテグラル型アーキテクチャに立脚した製品開発と組織能力の形成プロセスが確認された。これら2冊は本科研費の目的と整合性が高く、本研究テーマの中心的な研究成果である。また、これらの分野に関連して研究をさらに補完・発展できる可能性がある分野については、追加的な実証研究を行い、論文やディスカッションペーパーをまとめた。
|
Research Products
(33 results)