2007 Fiscal Year Annual Research Report
ボルネオ熱帯降雨林のリン制限:生態系へのボトムアップ効果と植物の適応
Project/Area Number |
18255003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北山 兼弘 Kyoto University, 生態学研究センター, 教授 (20324684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 直紀 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40335302)
宮本 和樹 独立行政法人森林総合研究所, 研究員 (60353877)
相場 慎一郎 鹿児島大学, 理学部, 助教 (60322319)
久保田 康裕 琉球大学, 理学部, 准教授 (50295234)
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Keywords | 熱帯降雨林 / 土壌リン / 生態系 / 生物地球化学 / リン利用効率 / 生理適応 / ヒース林 / ポドゾル |
Research Abstract |
マレーシア・サバ州Nabawan地域とブルネイにおいて、様々な土壌ポドゾル化形成段階にあるヒース林を踏査した。代表的林相を持つサイトをサバとブルネイに2カ所ずつ選び、土壌断面を掘削し、層位観察と土壌サンプルの採取を行った。サバでは、地上植生の樹種組成と構造特性の記載も行った。日本に持ち帰った土壌サンプルは、Sodium pyrophosphate、シュウ酸、dithionite/citrateを用いてFe・A1を抽出した。その結果、全ての集積層において、(シュウ酸+dithionite/citrate)-Fe+A1に対するSodium pyrophosphate-Fe+A1の割合が0.5を越え、ポドゾル化が進行していると判断された。サバにおいては、漂泊層がより厚く、下方のハードパンが厚い、ポドゾル化が強く進行したと思われる林分で、マキ科針葉樹が優占していた。マキ科針葉樹優占林分では優占しない林分に比べ、表層土壌の無機態窒素濃渡や林冠の生葉の窒素濃度が有意に低い傾向にあった。 一方、土壌の可溶性リン酸濃度や生葉のリン濃度については、明瞭な差がみられなかった。熱帯でのポドゾル化は、優占種の交代を伴う動的な過程にあり、優占種交代には土壌窒素濃度の変化が関係していることが示唆された。しかし、土壌リン可給性が動的な過程にどのように関わっているのか、については今後の課題として残された。リン欠乏に対する樹木の生理的適応を明らかにするために、個葉レベルでの光合成におけるリン利用効率の研究を行った。サバ州の異なる土壌リン可給性を持つ複数の林分において、陽葉の最大光合成速度を測定した。測定後に葉を凍結乾燥させて日本に持ち帰り、葉組織のリンの分画を試みた。リン欠乏の指標としての生葉のN/P比、LMA、光合成リン利用効率の関係をみたところ、リン欠乏の増大(生葉N/P比の増大)に対して、光合成リン利用効率は増加した。LMAが増加しても光合成リン利用効率の低下は鈍かった。これには細胞内でのリン画分の配分比変化が関係していると思われ、今後の検討課題になった。
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Research Products
(4 results)