2008 Fiscal Year Annual Research Report
ケニア、ナカリにおける後期中新世類人猿の発掘:系統、適応、古環境の解明
Project/Area Number |
18255006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中務 眞人 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 准教授 (00227828)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤田 順弘 島根大学, 総合理工学部, 教授 (80196328)
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Keywords | 後期中新世 / アフリカ類人猿 / 人類 / 古環境 / 進化 / 化石 / オナガザル科 |
Research Abstract |
この研究では、人類とアフリカ類人猿の最後の共通祖先像を明らかにするため、ケニア、ナカリにおいて、発掘を行い、後期中新世類人猿ナカリピテクスの化石資料を増やすこと、化石産出層の正確な年代、この地域の地質学的記載、古環境復元をおこなうことを目的とした。8月から9月に現地調査を行い、霊長類が豊富に出土しているNA38とNA60サイトの発掘を行った。その結果、オナガザル類を中心に、部分骨格を含む多くの霊長類化石を得た。また、大型植物化石を大量に産出する化石サイトを発見した。成果の一部は、予備的に第24回日本霊長類学会大会、第62回日本人類学会大会、第77回アメリカ形質人類学会大会等において発表した。ナカリ地域の古環境分析として、奇蹄類ヒッパリオンの頬歯を用いたメソウェア分析、複数のほ乳類群(ウマ科、ウシ科、ダイノテリウム類、ゴンフォテリウム類、キリン科、カバ科、サイ科、イノシシ類)を材料としたエナメル質の安定同位体分析を行った。ナカリ層とほとんど同時代であり地理的にも70キロ程度しか離れない、サンプル丘陵のナムルングレ層から得られた材料と結果を対比したところ、ナカリのヒッパリオンは、ブラウザー傾向を強く示すが、ナムルングレ層のヒッパリオンはグレーザー傾向が強いこと、ナカリのほ乳類群の大半は、C3植物環境依存の食性を示すことを明らかにした。この結果は、ナカリ層の堆積当時、この地域には大きな規模の森林が存在していたことを示している。これらの成果は、第68回古脊椎動物学会等で発表した。また、ナカリピテクスは同時代のギリシアから知られているウーラノピテクスと密接な系統関係を持つことが明らかになっている。そこで、ギリシア・イラン生物地区の代表的な化石産地であるイラン、マラゲーにおいて予備的な地質調査と発掘を行った。
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