Research Abstract |
(1)石川県輪島市郊外(旧国設酸性雨観測所)においてハイボリュームエアーサンプラーで1週間毎の大気浮遊粉じんを通年継続捕集し,昨年度,冬期に中国東北地方から石炭燃焼で発生したPAHが日本海を越えてわが国まで長距離輸送されていることを初めて明らかにした同じ捕集フィルターについて,本年はフッ素イオンをイオンクロマトグラフィーで分析して次の結果を得た。1)海塩性フッ素イオンを除した大気中フッ素イオン濃度(以下,フッ素イオン濃度)は,冬期(中国の暖房期,10月中旬〜4月中旬)に上昇,2)フッ素イオン濃度の推移は黄砂の飛来量(浮遊粒子状物質として測定)の推移と高い相関,3)フッ素イオン濃度の推移はPAH濃度の推移とは相関なし,4)後方流跡線解析法より,フッ素イオン濃度が高かった時期の空気塊は主に中国東北地方を経由。以上から,フッ素イオンが中国からわが国まで長距離輸送されていることが初めて明らかになった。 (2)共に製鉄業が盛んな日本の北九州と中国の鉄嶺とで,1日毎の大気浮遊粉じんを夏と冬に2週間ずつ継続捕集し,その有機溶媒抽出物のPAH, NPAH濃度をHPLCで分析するとともに変異原性をAmes試験,活性酸素(ROS)生成能をDTT assayでそれぞれ測定して,次の結果を得た。1)PAH, NPAHは鉄嶺で著しく高く,季節変化(冬>夏)が見られ,石炭燃焼の影響と推定された,2)いずれの都市でも変異原性は冬>夏だったが,ROS生成能は,夏>冬となった。以上から,都市大気毒性は必ずしもPAH, NPAH濃度のみで代表できず,ROS生成に寄与する物質は変異原性に主として寄与するPAH, NPAHとは異なると推定された。 (3)ディーゼルエンジン排出ガス粉じんの吸引曝露量を示すバイオマーカーとして,1-ニトロピレン水酸化体を測定するHPKC-蛍光検出あるいはLC-MS法を開発した。
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