Research Abstract |
WWWのようなソフトウェアシステムばかりでなく,群ロボットシステムのような自律分散機械を含めて,通信機能を有する複数の自律的計算主体から構成される分散システムを対象とし,特に,計算主体数が巨大である場合を対象にして,分散アルゴリズム論を構成することが本研究の目的である.申請当時,ギガを越えるテラという単位をシステムの巨大性をやや象徴的に表現するために用いたが,いよいよテラの時代が始まろうとしている. 分散アルゴリズム工学は「安心・安全」な分散システムを構築するための分散アルゴリズムを設計するための設計学である.特に,対象が巨大で,組合せ的手法に基づくアルゴリズムが非現実的である場合について,「安心・安全」な分散システムを構築するための方法論を提案することが主要な研究目的である.センサーネットワーク(SN),WWW(WS),分子計算(MC)という三つの異なる具体的な分野を応用例として初年度,2年度には検討をしてきた.第3年度に入り,SN,WS,MCという具体的な分野毎の研究から,それらに普遍的ないくつかの抽象的な問題の研究に,研究の方向性が変って来た.すなわち,本年度は,匿名性(すなわち,システムの構成要素が固有の名前を持たないこと)が含意すること,確率的自己安定性の解析,およびランダムウォークの解析を主に行った.その結果として,1)確率的アルゴリズムを考えることで,より広範なシステムに対して自己安定性を付与できること,2)匿名ネットワークに対しても少い記憶量でリーダ選挙が行えること,そして,3)確率システムにおける局所情報が持っ価値,などを明かにした.
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