Research Abstract |
多値符号化に基づく非同期データ転送技術を活用した高性能LDPCデコーダVLSIでは,バリアブル・ノードとチェック・ノード間のデータ転送を非同期化することで,データ転送ボトルネックを解消し,処理の高速化と低消費電力化を達成していく.そこで本年度(初年度)はまず,非同期LDPC復号アルゴリズム自体の効率化について検討した.LDPCデコーダ内のノードにおける演算は接続された他のノードからデータの到着を待ってから行われるため,同期式制御では遅延時間は接続された配線の中における最悪遅延に依存してしまう.非同期式制御だけを用いることで,遅延時間をノード単位で平均遅延まで高速化できるが,各ノードでは全データの到着を待つ以上,処理性能は依然として最悪遅延に依存してしまう.そこで,LDPC符号における前後のデータの類似性に着目すると,データの到来を待たずに前のデータを用いても,BERにほとんど影響を与えることなく同等の演算が実現できる.また,多値符号化に基づく双方向同時非同期データ転送方式を用いて,LDPCデコーダ内のデータ転送スループットを倍増化した.従来の同期式制御によるLDPCデコーダではクロックスキューの問題により,片側の演算ノードでしかクロック制御を行うことができず,1つの符号語のみを復号していた.そのため,一方の演算ノードで演算している際,もう一方の演算ノードでは何の処理も行うことができず,ハードウェアを最大限に生かすことができなかった.そこで,非同期制御である双方向非同期データ転送方式をノード間データ転送に適用することで,2つのデータの同時転送を行うことができるため,2つの符号語の同時並列処理が実現する.以上の研究成果を,多値論理国際シンポジウム(IEEE ISMVL)を始めとする査読付国際シンポジウムや学術論文誌等に17件の研究発表を行い,一定の評価を得た.
|