Research Abstract |
本年度は,まず昨年度にひきつづき,手元をズームアップした映像から物体に対する動作・操作を推定するための,手形状の詳細な推定手法の研究を行った,推定すべき動作の粒度の精粗に応じて2通りの手法を検討した. 1)3次元手形状モデルの当てはめに基づき,背景中からの手領域の切り出しと姿勢推定を同時に行う手法を研究した,この手法では,あらかじめ用意した一般的な手指形状モデルから,どのような輪郭線や内部のテクスチャ(皺や隠蔽による境界線)が生じるかを解析しておき,取得された実画像に対する尤度が最大になる候補を探索することによって実現した.この際,まぎわらしい背景シーン,モデルと実際の手形状の差異や画像取得時のカメラパラメータの差異ならびにノイズによってあやまった照合が行われることを考慮し,あらかじめどのような照合誤りがありうるかを想定して照合度合いを評価をする手法を開発することにより,従来手法よりロバストに背景から手領域を切り出すことができ,かつ正確に手指の姿勢(位置,スケール,向き,および各関節角度)を推定することができた(国内外の著名会議会議にて発表). 2)前記の手法は比較的精細に手指の形状を推定できるが,計算コストがかかり,また物体部分の検出に別の手法を必要とする制約がある,そこで,道具を持つことによる背景および隠蔽を含んだ場合に人間の手が物体を把持するパターンを分類する手法を研究した.昨年度までで背景差分に基づいて手および物体領域を抽出して,部分空間法による判別実験を行ったが,差分画像の不完全さが性能を著しく劣化させることが判明したので,部分空間に繰り返し射影を行うことによる前景画像の修復をおこなう手法を開発した.背景が比較的単純で照明を制御できる環境下では6種類ほどの把持パタンを識別して,コップやペン,カッターなど,手のみあるいは物体のみの映像では判別の難しいものを,手と物体の相互作用を学習することで,不完全な前景を適切に復元しつつ物体識別することができること示した(次年度に国内外著名学会にて発表予定). さらに,複数人物による持込・持去の同時発生に対処すべく,複数人物追跡,背景推定の精度向上について研究した。現行プロトタイプシステムの実環境における耐久試験結果では,影の影響による誤検出が多く発生し,対話ベースの検索に支障をきたすレベルであり,影・短期の照明変動対策が必要なことが判明した. また昨年度プロトタイプを実装した,持ち込み持ち去りを検知してデータベースに保存し,音声とジェスチャインターフェースによって現場にて持込,持去の履歴を問い合わせることのできるシステムにおいて,検索された情報(映像)提示するため,非固定式のプロジェクタ提示方式を開発し,テーブル表面や壁面,床面などの任意の位置にゆがみの少ない映像を投影することを可能にした.
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