2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18300089
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
今井 むつみ 慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (60255601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
針生 悦子 東京大学, 教育学研究科, 助教授 (70276004)
岡田 浩之 玉川大学, 工学部, 教授 (10349326)
梶川 祥世 玉川大学, 学術研究所, 講師 (70384724)
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Keywords | 認知心理学 / 言語発達 / 語意学習 / 語意推論 / 異言語比較 |
Research Abstract |
本研究は、乳幼児期に子どもは動詞、名詞、形容詞、助数詞をどのようなメカニズムで学習しているのか、それらの学習においてどういう側面が言語普遍的でどういう側面がどの程度インプット言語に特化したものなのかを明らかにすることを目的とする。18年度は動詞の学習に焦点を絞り、日本語、中国語、ドイツ語を母語とする2歳から5歳までの子どもが、文の項構造から新奇動詞を推論する際の、言語普遍的バイアスと母語の言語的特性の影響を吟味するための実験を行った。項の文法的情報から新奇な動詞を推論する際、発達初:期には子どもは項の数にもっとも注目するといわれている。項の数が一つなら自動詞で、自発的動きを指示し、項の数が二つなら一方が他方に何かをしかけ、影響を及ぼす因果的動きを指示すると子どもは考える、というのが一般的な考え方である。しかし日本語や中国語は項が頻繁に文から脱落するため、項の数は信頼できるてがかりとはいえず、日本語の場合には格、中国語の場合には動詞に対する位置のほうが数よりも重要な手がかりとなる。そこで、本研究では日本語、中国語、ドイツ語をそれぞれ母語とする子どもに自発的動きのビデオと因果的動きのビデオを提示し、子どもが表面的な項の数からどのような語意推論をするかを検討した。データ収集がまだ完了していないが、子どもは2歳では格情報や項の位置よりも項の数に注目し、表面的な項の数がひとつしかないと(例えば「ウサギさんをネケっているよ」)格や位置情報を無視して新奇動詞を自動詞と考え、自発的動きに対応づけるのに対し、5歳では格情報や位置情報に注目し、正しい推論ができることがわかった。ドイツ語は項の省略がめったにないので、2歳から5歳まで項の数を手がかりに自発的動き-因果的動きの対応付けを行っている傾向が見える。19年度にも継続してデータ収集を行っていく。
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