Research Abstract |
ケース,コントロールのサンプル間で活動度の変化する転写因子を,マイクロアレイで取得された遺伝子発現データから,仮説検定により発見するための手法を提案した。その手法を適用することにより,転写因子の活動度が,各実験間で変動する様子を,網羅的に俯瞰するマップを得ることができる。我々は,当手法を,中枢神経系において脱髄したミエリン鞘の再髄鞘化を促す働きをもつ漢方薬を,マウスに投与したケース,コントロール実験から得られたデータに対して適用した。一般に漢方薬は,単一の化合物ではなく,混合した生薬の抽出物からなるため,作用領域は複数あると考えられる。それ故,通常行われるように単に少数の高発現差のある遺伝子群を列挙しただけでは,その作用機序や生体システムの働きを推察することは困難である。それに対し,我々の提案手法は,今回適用した転写因子活動度を含め,gene ontology等,生体システムの働きの特徴を要約する,さまざまな機能的アノテーションと共に適用可能であり,システムの機能を,より総体的に理解するための情報を抽出するツールとして有望である。 また,ヒト血管内皮細胞(HUVEC)においてアポトーシスを誘導させた時系列マイクロアレイデータからダイナミックベイジアンネットワークにノンパラメトリック回帰を組み合わせた方式で遺伝子ネットワークを推定した。また,siRNAによる遺伝子ノックダウンマイクロアレイデータを用いて,このネットワークを比較解析した。その結果,この遺伝子ネットワーク推定による方法が薬剤ターゲットの探索に有効であることが示唆された。
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