2006 Fiscal Year Annual Research Report
大規模代謝・遺伝子ネットワークのダイナミックシミュレーションとシステム解析
Project/Area Number |
18300098
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
倉田 博之 九州工業大学, 情報工学部, 助教授 (90251371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 和幸 九州工業大学, 情報工学部, 教授 (00150318)
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Keywords | バイオインフォマティクス / アンモニア同化 / シミュレーション / システムバイオロジ / ロバストネス / ネットワーク / 大腸菌 |
Research Abstract |
大腸菌アンモニア同化システムのヒステリシスのメカニズムを解明するために,シミュレーション,理論解析,実験による証明を行った。ヒステリシスとは、あるパラメータ変化に対して特定の挙動の変化を調べたとき、そのパラメータ変化の経路に依存して挙動が異なる現象である。そのため履歴効果とも呼ばれる。たとえば、ヒステリシスを示す系では、ある変数の増加時と減少時では、系は異なるルートを辿り、双安定性を示す状態をもつ。さらに元の状態を復元することが不可能な場合を不可逆と呼ぶ。生命における不可逆な反応として分化が挙げられる。このようなヒステリシスを引き起こす原因の一つとしてはスイッチング機構の存在が挙げられる。生命において、このスイッチの存在は大きな意味を持つ。発生・分化の段階では、多くのスイッチング機構が生命ネットワーク内で働いていることが指摘されている。 大腸菌の窒素同化システムにおいて、シミュレーションにより環境中のアンモニア濃度の変化に対してシステム(GSやNRIのタンパク質)がヒステリシスを示すことが予測した。このヒステリシス挙動がポジティブフィードバック制御に起因することを、シンプルモデルを用いた理論解析により明らかにした。シンプルモデルにおいて立式した3次方程式を解くことによって、システムが複数の定常解を示すアンモニア濃度範囲があることがわかった。また、ポジティブフィードバック制御を強くすると、複数の定常解を示すアンモニアの濃度範囲が拡大し、逆に弱くすると、定常解が1つになることを示した。最後に,ヒステリシスを実験によって証明することに成功した。
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