2008 Fiscal Year Annual Research Report
L、Dーセリン代謝連関システムによる神経機能制御の遺伝子改変マウス解析基盤形成
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18300125
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古屋 茂樹 Kyushu University, バイオアーキテクチャーセンター, 教授 (00222274)
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Keywords | アミノ酸 / 代謝疾患モデルマウス / セリン / グルタミン酸受容体 / D-アミノ酸 |
Research Abstract |
本研究課題は、セリン合成不全マウスを作出し、脳内在性L-セリン合成によるD-セリン代謝制御の特性付けからセリン代謝異常と高次神経機能の連鎖を理解するための解析プラットフォームの形成を目的としている。平成19年度にはアストロサイト特異的なPhgdh KOマウス(hGFA^<+/Cre>::Phgdh^<flox/flox>)の作成に成功した。Phgdhは解糖系中間体3-ホスホグリセリン酸から開始されるセリン生合成経路(リン酸化経路)の初発酵素である。アストロサイト特異的Phgdh KOマウス(以下CKOマウスと略す)は胎生致死を免れるが、成熟期脳内セリン含量が顕著に低下し,小頭症を呈す。本課題の目標達成に向けて3種の遺伝子改変マウスを作成したが、CKOマウスが最も適している事が判明した。平成20年度はCKOマウスを用いて前脳領域におけるD-セリン分析を中心に解析を行い以下の知見を得た。 1.CKOマウス大脳皮質ではL-セリン含量の低下に伴い、遊離D-セリン含量も正常対照(Phgdh^<flox/flox>の10%以下に激減していた。海馬についても同程度のD-セリン含量低下が認められた。 2.腹腔内へのL-セリン投与は皮質内のL-及びD-セリン含量を増加させたが、移行効率は著しく低かった。 3.L-セリンからD-セリンへの変換を触媒する酵素セリンラセマーゼ(Srr)のmRNA及び蛋白質含量を検討したが、ともに正常対照と同レベルであった。免疫組織化学的手法で皮質内分布を検討したが、CKO皮質においても正常対照同様に主に神経細胞に反応性が検出された。 以上の結果より、D-セリンがNMDAグタミン酸受容体のco-agonistとして作用する前脳領域では、リン酸化経路により脳内で内在的に合成されたL-セリンがD-セリンの主要前駆体であり、定常状態でのD-セリン含量は脳内L-セリン合成量によって調節されていることが明らかとなった。以上の成果は現在論文として投稿中である。CKOマウスD-セリン代謝異常の判明を受け、引続き現在、グルタミン酸受容体の発現と機能変化に着目して解析を進めている。
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Research Products
(15 results)