Research Abstract |
ドーパミンはパーキンソン病,統合失調症,注意欠陥、多動性障害,レット症候群,薬物依存などの病態と密接に関わっている。ドーパミン作用の異常は様々な精神、神経症状を呈するため,ドーパミンが作用するメカニズム,つまり,ドーパミン情報伝達系の解明は重要である。この研究の目的は,正常に機能する「線条体領域ドーパミン情報伝達マップ:正常機能」の確立を目指すとともに,病的条件下において精神、神経機能異常を誘導する情報伝達系を特定し「線条体領域ドーパミン情報伝達マップ:病態モデル」を作製することである。H19年度の研究により,以下の研究成果を得ている。 ドーパミン情報伝達を制御機構につき,phosphodiesterase(PDE)に焦点を当て解析した。線条体にはPDE4B,PDE10AなどのPDEサブタイプが発現しており,薬理学的,生化学的,および免疫組織化学的手法を用いて解析を行ったところ,直接路D1ニューロンではPDE10A,間接路D2ニューロンではPDE10AとPDE4B,ドーパミン神経終末ではPDE4Bが選択的に発現し機能していることを示唆する結果を得た。 レット症候群モデルマウスであるMecp2^<308/Y>マウスの解析では,20週齢を過ぎるとドーパミンD1受容体シグナルの選択的亢進を認めることを明らかにした。さらに,Mecp2^<308/Y>マウスでは樹状突起スパインの形成に関わる蛋白の発現および機能調節が異なることを明らかにした。 薬物依存モデルの解析では,メタンフェタミン逆耐性モデルでは高親和性ドーパミンD2受容体の割合が増え,逆耐性を消失させるドーパミンD1アゴニストの慢性投与により高親和性ドーパミンD2受容体の割合が正常化することを明らかにした。この結果により薬物依存におけるドーパミンD2受容体の機能異常が明らかになった。
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