2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18300129
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Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
早石 修 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究員 (40025507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
裏出 良博 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究部長 (10201360)
黄 志力 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究副部長 (10321704)
曲 衛敏 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究員 (20332231)
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Keywords | 睡眠覚醒 / 睡眠物質 / 神経回路 / 液性調節 |
Research Abstract |
プロスタグランジン(PG)D_2の合成酵素(PGDS)阻害剤であるSeCl_4の投与がラットの睡眠を阻害することから、我々はPGD_2が睡眠誘発に必要であると主張してきた。しかし、PGDSやPGD_2受容体(DP_1R)の遺伝子欠損(KO)マウスが野生型(WT)マウスと同じ睡眠覚醒パターンを示すので、生理的睡眠へのPGD_2の関与を疑問視する向きもあった。また、脳内にはリポカリン型(L-型)と造血器型(H-型)の2種類のPGDSが存在することも証明され、どちらが睡眠調節に関与するのかも不明であった。 そこで、SeCl_4をWT、L-PGDS、H-PGDS、L型とH型の両酵素、あるいは、DP_1RのKOマウスに投与し、睡眠覚醒に及ぼす効果を測定した。その結果、WTマウスへのSeCl_4投与は、用量依存的にPGD_2の脳内濃度を減少させ睡眠量を低下させた。この睡眠阻害は、H-PGDS KOマウスでも観察されたが、その他のマウスでは全く観察されなかった。さらに、新たに開発されたDP_1R拮抗薬(ONO4127Na)をDP_1Rの局在する前脳基底部くも膜下腔に投与すると、ラットの睡眠量は用量依存的に減少した。これらの結果は、L-PGDSにより産生されたPGD_2がDP_1Rを介して生理的な睡眠を誘発することを示している。 また、PGD_2は腹側外側視索前野(VLPO)の睡眠中枢を活性化し、結節乳頭核(TMN)にある覚醒中枢のヒスタミン神経系を抑制して睡眠を誘発すると考えられる。そこで、ヒスタミン受容体(H_1R)のKOマウスの睡眠覚醒を調べた。その結果、H_1R KOマウスはノンレム睡眠中の短期覚醒が少なく、H_1Rがノンレム睡眠から覚醒への変化に重要な役割を果たすことが明らかになった。 これらの研究により視床下部に存在するVLPOとTMNの睡眠覚醒シグナルのクロストークを解明することができた。
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