2008 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類モデルによるエイズ病態形成の分子基盤に関する研究
Project/Area Number |
18300142
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三浦 智行 Kyoto University, ウイルス研究所, 准教授 (40202337)
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Keywords | ウイルス / 感染症 / 病理学 / 微生物 / 獣医学 |
Research Abstract |
SHIV粘膜感染初期のウイルス動態とその後の病態との関係を明らかにする為に、急性免疫不全を引き起こすSHIV強毒株及び、同じ親株由来であるが感染後3年以上エイズを発症しない弱毒株についてそれぞれ粘膜感染実験を行った。そして両株についてウイルス動態、CD4+細胞への影響を全身臓器で経時的に解析した。強毒クローン株SHIV-KS661及び、弱毒クローン株SHIV-#64をそれぞれアカゲザルに経直腸接種後、6、13、27日目に各2頭の剖検を行い、各種臓器を採取した。 それらより分離したリンパ球のプロウイルスDNAを定量PCR法により定量、感染性ウイルス産生細胞をプラークアッセイにより定量した。また、リンパ球中CD4+細胞のポピュレーションの変化を解析した。両株間で血漿中ウイルスRNA量に大差は無かったが、全身臓器を解析する事によりウイルス動態の違いが示された。強毒株は接種13日後で全身臓器におけるプロウイルスDNA量、ウイルス産生細胞数がピークであった。27日後ではプロウイルスDNA量と共にウイルス産生細胞数は著減し、CD4+細胞は全身臓器で枯渇状態だった。これに対し、弱毒株ではプロウイルスDNA量は全身臓器で27日後がピークであり、ウイルス産生細胞は13日後に腸管、腸間膜リンパ節で、27日後には胸腺でピークが見られた。また、27日後までに小腸でのみCD4+細胞の著しい減少がみられた。強毒株の経直腸感染では13日後までに全身臓器でほぼ同時多発的にウイルス増殖のピークを迎え、その後全身のCD4+細胞が枯渇する。一方、弱毒株のウイルス拡散は遅く、感染局所近傍から順にウイルス増殖のピークがあり、CD4+細胞の減少も限局的である。よって、これら両株は感染初期において全身への拡散速度、CD4+細胞傷害作用が大きく違い、それら差異がその後の病態に深く関与する事が示唆された。
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