Research Abstract |
部分腎摘慢性腎不全モデルラットに対する長期的運動(EX),低蛋白食療法(LP),分枝鎖アミノ酸(BCAA)補充療法,アンジオテンシンII受容体拮抗薬バルサルタン(V)の運動耐容能,腎機能,腎病変,尿蛋白排泄量(UP),血圧日内変動,骨格筋線維組成,骨格筋毛細血管密度,骨代謝速度,骨塩密度に対する作用を検討した. Wistar-Kyotoラットを手術し,5/6腎摘(NX)慢性腎不全モデルを作成した.NXラットの血漿BCAA濃度は偽手術ラットに比較して低下していることを確認した.また,NXラットが60分間の速度20m/minの走行運動を行うと血漿BCAA濃度はさらに低下することを確認した.一方,運動前に0.375g/kg(バリン:ロイシン:イソロイシン=1.2:2:1)以上のBCAAを摂取させると運動後の血漿BCAA濃度の低下防止に有効であることを確認した. 次いで,ラットを以下の10グループに分け,(1)NX+常食,(2)NX+常食+EX,(3)NX+LP,(4)NX+LP+EX,(5)NX+LP+BCAA,(6)NX+LP+BCAA+EX,(7)NX+LP+V,(8)NX+LP+V+EX,(9)NX+LP+BCAA+V+EX,(10)偽手術,12週間にわたって治療した.EXは速度2m/minのトレッドミル運動を1日60分間,1週間に5日間行った.LPの蛋白質含有量は12%とした.一方,常食の蛋白質含有量は18%とした.BCAAは0.375kg/kgを連日経口投与した.Vは10mg/kgを連日経口投与した. 2週間毎に24時間UPを測定した結果,グループ(1)のUPは偽手術群に比較して有意に高値となり,12週間にわたって増加を続けた.一方,EXやLP治療行うとUPは減少した.即ちUPの値は,グループ(1)>(2)>(3)>(4=5=6=7=8=9=偽手術)であった. 治療開始から12週間後に採血し,腎機能の指標を測定した.グループ(1)の血清クレアチニン(Scr)と血液尿素窒素(BUN)は偽手術群に比較して有意に高値であり,一方EXやLP治療を行うと改善した.即ち,Scrはグループ(1)>(2)>(3=4=5=6=7=8=9)>偽手術,BUNはグループ(1)>(2)>(3=4==5=6=7=8=9)>偽手術であった. 以上より,慢性腎不全モデルラットにおけるEX,LPの腎保護効果が示唆された.また,BCAAの補充やVによる高血圧のコントロールを同時に行っても腎傷害や腎機能障害の増悪を引き起こすことはなかった. 未だ解析は半ばであるが,慢性腎不全における運動,BCAA補充,アンジオテンシンII受容体拮抗薬による併用療法の有効性の機序を解明する手がかりが得られた.
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