Research Abstract |
ヒト骨格筋の生体内での収縮特性に関する研究はこれまで多くなされてきたが,生体内の収縮で個々の筋線維が発揮しうる短縮速度については不明の点が多い。我々は最近,「スラックテスト法」を応用した新しいシステムを開発することにより,ヒト下腿三頭筋の無負荷短縮速度(Vo)をさまざまな筋活動レベルのもとで測ることに成功し,筋活動レベルの上昇に伴ってVoが増大することを示した。得られたVoは,動員されている筋線維のうち最も速いものあるいはそのグループのVoを反映することから,この現象は,筋線維の動員に関する「サイズの原理」を反映するものと考えられる。本研究は,このスラックテスト法を応用し,1)筋線維組成の違い,2)加齢,3)運動・トレーニング,4)遺伝的要因などがVoおよび筋線維の動員パターンに与える影響について明らかにすることを目的とする。18年度の研究により,以下が判明した。 1.ヒトを対象とした研究 1)筋線維組成がVoおよび筋線維動員様式に与える影響:前頸骨筋を電気刺激する系を用い,i)単収縮の強縮後増強(PTP)を指標として,速筋線維比率(%FT)を推定可能なこと,ii)スラックテストによるVoが電気刺激強度に依存せず一定値をとることなどが判明した。 2)遺伝子タイプがVoおよび筋線維動員様式に与える影響:口腔粘膜より微量の粘膜上皮細胞を摂取し,ACTN-3(α-アクチニン-3)の遺伝子型とVoの関係についての予備的研究を行った。その結果,遺伝子型とVoの間には有意な関連性が見いだせなかった。 2.ラットを対象とした研究 1)筋線維への遺伝子導入の試み:下腿三頭筋に対し,エレクトロポレーション法により遺伝子導入を行った(遺伝子導入装置を購入)。昨年度はまず,効果的に遺伝子が導入される条件を設定するため,GFP遺伝子を用いた導入実験を行い,この遺伝子が導入されることを確認した。
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