2008 Fiscal Year Annual Research Report
生活リスクの認知・対処および生活評価の構造に関する日米比較による実証研究
Project/Area Number |
18300247
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
奈良 由美子 The Open University of Japan, 教養学部, 准教授 (80294180)
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Keywords | 生活リスク / 生活評価 / 認知と対処 / 社会調査 / 日米比較 / 安全と安心 / リスクマネジメント / 信頼 |
Research Abstract |
本研究は、人々の生活リスクに対する認知・対処と生活評価の実態を把握し、両者の関係を明らかにすることを中心課題に据えながら、さまざまな生活状況の属性がそれらにどう関わっているかを、日本・米国での質問紙を用いた社会調査によって解明することを目的としている。 19年度末に実査を行い、20年度はデータを分析・考察した。調査フレームは以下のとおりである。調査期間[日本]20年2/13〜2/29、[米国]20年2/23〜3/28。調査対象[2カ国]全国の20〜69歳の男女。有効回収数[日本]1,050、[米国]509。生活上起こりうる様々なリスク(地震、交通事故、犯罪、がん、原子力発電所の事故、食品への異物・薬物の混入、老後生活の経済的逼迫、収入の減少、インターネット犯罪など19項目)を提示し、それぞれに対する不安の程度等およびリスク対処の程度等をたずねた。さらに、安全・安心についての意識項目、自然観や科学技術志向性などのリスク観、コスト許容度や自助意識などのリスクマネジメント観、公的・共的資源の入手程度もおさえた。 結果として、すべてのリスク項目について日本人の不安の程度は高い。自分に大きな頻度と強度で具現化すると考えており、未知性と恐ろしさを強くとらえている。リスク対処について、日本ではリスクファイナンスはよく実施されているものの、対処の自己評価は低かった。防止復旧対策において、国、市町村、近隣・地域の人たちからの資源動員を見込める程度は、日本のほうが低くなっている。また、本人が不安を感じていても科学的に安全ならよいとする回答は米国人よりも日本人において低く、日本で安心を重視する傾向が見て取れた。日本人はリスクに対する強い不安を持っており、自らリスク対処を実践してもそれがなかなか払拭できずにいること、公助や共助にも大きな期待を持てずにいることが分かる。そして日本の回答者の生活全般への満足度は米国よりも低い結果となった。
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