2006 Fiscal Year Annual Research Report
「灰吹法」の実証的検証に基づくわが国における金・銀の製錬技術の技術史的研究
Project/Area Number |
18300303
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
村上 隆 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 上席研究員 (00192774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 潤 岡山大学, 大学院 自然科学研究科, 教授 (60093259)
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Keywords | 灰吹法 / 製錬技術 / 材料科学 / 機器分析 / 発掘出土資料 |
Research Abstract |
わが国における約2500年の金属の歴史の中で、特に金・銀に注目し、その純度を高める精錬技術の技術移転と定着、さらには技術発展に関して実証的な検証を行うことが、本研究の目的である。わが国における鉱石の採鉱から金属の製・精錬に至る技術の歴史を解明することは、日本の技術史上たいへん重要であり、従来から試みられてきた。しかし、その論拠の拠りどころは、主に文献史料であるため、文献史料自体の存在が希薄である古代の状況はまったくわかっていないのが実情である。本研究は、従来からの文献史料の調査を踏まえつつ、最近の考古学的発掘によって新たに出土した実資料に対する科学的調査の成果に基づき、古代からの技術の変遷を実証的に検証する手法をとることを大きな特徴とする。 本年の研究成果は、大きく2点に集約される。第1点は、8世紀後半に、金・銀の純度を上げる灰吹法の原型とも呼べる方法が、実際に行われていたことを具体的に奈良県飛鳥池遺跡から発掘された資料の分析に基づいて検証したことである。これにより、これまで16世紀まで下がるといわれていた日本での起源を850年程度も遡ることになった。この発見は、日本の科学技術史において大きく位置づけられよう。また、島根県大田市に位置する石見銀山遺跡において、実際に灰吹法に用いた鉄鍋を発見したことが第2点目である。灰吹用の鉄鍋の発見自体は2例目であるが、これまで1533(天文2)年において導入されたとする灰吹法に鉄鍋を用いることが実際に現地で行われた物証として注目される。以上2点は、いづれも出土した炉跡や土塊、さらには土中から分別した銀-鉛合金の細粒を材料科学の分野で用いる蛍光X線、X線回折、EPMAなどの分析手法を駆使して行った成果である。
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