2009 Fiscal Year Annual Research Report
音響光学的手法による炭素質エアロゾルの放射特性の測定
Project/Area Number |
18310004
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
北 和之 Ibaraki University, 理学部, 准教授 (30221914)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野澤 恵 茨城大学, 理学部, 准教授 (10261736)
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Keywords | 炭素エアロゾル / エアロゾル直接効果 / 音響光学法 / エアロゾル放射特性 / 気候変動 |
Research Abstract |
気候変動は、現在最重要な環境問題のひとつである。気候変動をもたらす主因は温室効果気体の増加であると考えられているが、気温などの変動を予測する上で現在もっとも不確定な要素として、大気中のエアロゾルの影響が挙げられる。特に、元素状(黒色)炭素エアロゾルについては、実大気中ではその表面に有機・無機成分が付着している場合が多く、それによって放射吸収特性が大きく変化すると思われるが、これまでその定量化は進んでいない。 本研究では、BC粒子をフィルターに捕集して光吸収量を測定する従来の手法では、特に粒径が小さい時にBC粒子がフィルター内部に入り込むため、フィルター繊維による光の多重反射の影響で系統的な誤差が生じることを明らかにできた。そこで、新しいエアロゾルの放射特性の測定法として、音響光学法を導入し、主に元素状炭素エアロゾルなど炭素質エアロゾルの放射特性を精度よく測定する手法を確立させた。この手法により、まず実験室で発生した模擬大気BC粒子を用いて、粒径と光吸収・消散係数の関係、および透明物質の被覆による光吸収・消散量の増大について測定を行った。その結果、適切な複素屈折率をデータから求めることで、実験結果はほぼ誤差範囲内で、比較的簡単なモデル(BHMIE, BHCOAT)により説明できることが分かり、このようなモデルで近似的に大気BCの光学特性を表すことができることを示すことができた。 さらに、実大気の光吸収量、およびそのうち被覆による増大分の寄与について、東京での都市大気観測により調べた。東京では、ディーゼル排気など排出源が多いので、郊外域でも光吸収量は10-30(1/Mm)とやや大きく、被覆の厚みは粒径の10-30%と少なめである。被覆の効果による寄与は、多くの場合で被覆厚と正相関し、大きさも20-30%と実験室の結果と一致する結果が得られた。しかしときに50%を越え、被覆厚の測定値から期待されるよりも大きくなる現象が見つかった。これは、被覆効果以外にも光吸収量を増大させるメカニズムがあることを示唆する注目すべき結果である。
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Research Products
(9 results)