2006 Fiscal Year Annual Research Report
気候関連ガスの動態を左右する海洋微生物系統群の解析
Project/Area Number |
18310011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浜崎 恒二 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (80277871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 俊 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (40183892)
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Keywords | ブロモデオキシウリジン / 海洋微生物 / 16SrRNA遺伝子 / 物質循環 |
Research Abstract |
本研究では、細胞増殖のマーカーとして細胞生物学、医学等の分野に汎用されているブロモデオキシウリジン(BrdU)を、海洋微生物自然群集の増殖応答解析に利用する独自のアプローチ「ヌクレオシドトレーサー法」よって、海洋における炭酸ガスやジメチルサルファイド(DMS)といった気候関連ガスの動態に、強い影響を及ぼす微生物KeySpeciesを特定し、最新の分子微生物生態学的手法を駆使して、その動態を解析することを目的とした。具体的には次のような二つの課題を実施した。 1)有機物質循環を駆動する鍵となる微生物系統群(KeySpecies)の特定 亜寒帯域・亜熱帯域の南北の測点間でDGGEバンドパターンを比較したところ、亜寒帯域から亜熱帯域にかけて全DNAおよびBrdU標識DNAのDGGEバンドパターンにはそれぞれ違いが見られた。これより西部北太平洋における細菌群集構造と増殖活性は水塊の違いを反映していると考えられる。また、BrdU標識DNAを含む16S rRNA遺伝子解析の結果、増殖速度の速い細菌群として23種のクローンを特定し、α-proteobacteria(5種)、β-proteobacteria(1種)、γ-proteobacteria(4種)、Cytophaga-Flavobacterlum-Bacteroidetes(CFB)group(5種)、Gram positive bacteria(5種)、Cyanobacteria(3種)であった。 2)特定細菌系統群の増殖応答解析 これまでの解析結果より、植物プランクトンブルームにおける細菌群集の増殖応答パターンが明らかとなり、実際に応答していくるのはどような種類であるかも明らかにすることが出来た。初期の粒子状有機物の溶存化にはAlteromonas属が、これに続く溶存化された有機物の利用、分解にはPolaribacter属の細菌が寄与していることがわかった。また、全期間を通してRoseobacter属の細菌の活発な増殖が認められ、植物プランクトン由来有機物の利用、分解過程における常在菌であることが示唆された。 以上の成果は、原著論文2報、総説1報、解説1報、国際微生物生態学会における口頭発表、ポスター発表各1件、日本微生物生態学会ポスター発表2件、その他国内招待講演3件で公表された。
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