Research Abstract |
地球温暖化に伴う気温上昇および気候変動に伴う降水パターン変化といったバックグラウンドとしての非定常な自然環境変動下において,物質収支特性として捉えられる流域環境状態が流域上流に位置する森林の管理状況にどのように影響を受けるのかを明らかにするため,本年度は,1)現地観測対象森林の詳細選定,2)森林樹冠閉塞状況の定量化手法開発,および3)森林管理に関わる産業構造の現況分析を行った. まず,観測対象森林の選定では,30〜40年生のスギ人工林(面積十数ha)として,間伐の行われている森林と間伐が全く実施されていない森林を探し出し,両者の地域特性,地形特性,土壌特性について,検討した.温暖化・気候変動の外的自然環境要因を同一として,森林管理の効果を比較するためには,間伐の有無以外の条件を揃えることが本研究のポイントとなるが,完全に条件が一致する森林は皆無であり,この課題に対して,流出モデルをべースとして,解決を図っている段階である. ついで,森林内水収支を支配する森林内光環境を評価するために,航空機搭載MSSおよびレーザプロファイラによるリモートセンシング情報とグランドトゥルースとしての全天写真画像解析から樹冠粗密度を推定する手法を開発し,最終的には,人工衛星リモートセンシング情報(Landsat/TM)を用いて任意森林域の樹冠閉塞状態を定量化する方法を開発した.今後の課題として,この手法による推定精度を検証することが残されている. さらに,現地観測対象とする岐阜県長良川上流森林における森林管理の効果を経済影響として評価するために,水環境・流域環境改善による地域経済への影響評価モデルを構築し,その効果分析を行うことができた.また,地域における林業の現況を産業構造・生産構造から分析することにより,森林管理システムの現況を明らかにした.
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