Research Abstract |
ITと環境問題には,いくつかの側面がある。 第1は. IT製品・IT部品の生産による環境影響である。原料の貴金属の生産や, 鉛・銅などの生産による環境影響, 半導体生産に係る化学物質による汚染いわゆるハイテク汚染問題そして半導体生産に必要な原料やエネルギー需要の問題である。第2は, IT製品の消費によるエネルギー需要である。とくにサーバによる電力需要が増加傾向にある。IT利用によるエネルギー節約を上回るエネルギー消費増加があるかが問題で, 単品のエネルギー効率向上があっても, 利用台数増加がそれを打ち消してしまう傾向がある(リバウンド効果)。この課題は「グリーンITJ問題として最近, 注目を浴びている。第3は, IT製品のリサイクルと廃棄による環境問題である。現在, 日本では, 家電リサイクル制度によって, 年間約400万台の使用済みTVが回収・リサイクルされているが, これとは別に, その半数近くの約200万台の使用済みTVがベトナム, フィリピン, マカオなど海外へ輸出されている。輸出先での中古とリサイクルの実態も不明部分が多い。TVの地上デジタル化によって, 大量のCRTTVが使用済みとなり, その回収・処理体制も課題である。各国別にリサイクル制度を構築中であるが, 海外流出の実態把握と対策が大きな問題である。 ITのリサイクルと廃棄 日本国内では家電4品(TV, 空調, 洗濯機, 冷蔵庫)については, 家電リサイクル法の制度のもとで, 使用済み家電4品の年間発生量約2200万台のうち, 約1100万台が回収され, リサイクルされている。残りが国内中古, 国内リサイクル, 海外も中古・リサイクルされていると見られるが, 正確なところは不明である。このうち, 使用済みTVについては, 年間発生量約800万台のうち, 約400万台が国内で回収・リサイクルされているが, それ以外の約200万台以上が, ベトナム, フィリピン, マカオなどに中古品とし、て輸出されている。輸出先で電圧調整して, 中古品として利用されているものも多いが, なかには部品・金属が回収され, 最終的にはリサイクルされる。しかし, そのリサイクル処理プロセスが正式に確認できるわけではない。一方, IT機器については, 年間出荷量は最近2007-2008年に約17万トン前後で, 使用済みIT機器の年間発生量は約15万トン程度と推定されている。内訳は, PCと周辺機器(9. 7万トン), ワークステーション他(約6万トン)で, ユーザは事業系ユーザ(リース, レンタル, 売り切り)で約10万トン, 家庭系ユーザは5万トンである。流通ルートの推定によれば, 国内リユースは約2万トン, 国内資源再生6. 4万トン, 海外輸出(中古品輸出とスクラップ輸出の双方)3. 7万トン, 最終処分0. 8万トンである。この調査によっても, 国内発生使用済みIT機器の約4分の1が海外流出していることがわかる。
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