2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18310033
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
藤倉 良 Hosei University, 人間環境学部, 教授 (10274482)
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Keywords | ダム開発 / 住民移転 / スリランカ / インドネシア / 移転補償 / 開発援助 |
Research Abstract |
平成18年度,19年度に引き続き,インドネシアのアンダラス大学及びパラデニア大学並びにスリランカのモラツワ大学と共同で研究を実施した。調査対象は,日本の神通ダム,と沼田ダム(計画が中止され建設されず),井川ダム,インドネシアのコタパンジャンダム及びビリビリダム,スリランカのコトマレダムである。 これまでの調査研究結果を総合的に分析し,少数の移転成功例を普遍化することは困難であるものの,以下の事項が時代と地域を越えて共通に指摘できることを明らかにした。 1.移転担当実施機関の長期にわたるコミットメントが不可欠であること。 2.就労機会と次世代への教育機会の有無が,住民が移転先を決定し,かつ,移転後の満足度を決める上で,極めて重要であること。 3.移転補償の形態としては,代替地による現物補償や金銭補償が一般的であるが,水没地を借り上げ,その賃料を移転住民に支払う方式も検討に値すべきこと。 4.十年単位の長期的生活再建プログラムが重要であること。 5.経済的補償に加え,移転住民の「被害感」を緩和する心理的ケアが重要な意味を持つこと。 6.移転住民が移転地を自発的に離れることが,必ずしも住民の不満の表れではないこと。 これらの結果を,International Journal of Water Resource Developmentの特別号としてとりまとめた。さらに,この成果を踏まえ,世界ダム会議勧告の運用実施における問題点と,このような問題が生じる過程を分析した。
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