2007 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロビームによるクロマチン損傷誘発バイスタンダー効果のイオン種・LET依存性
Project/Area Number |
18310042
|
Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
鈴木 雅雄 National Institute of Radiological Sciences, 重粒子医科学センター, 主任研究員 (70281673)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鶴岡 千鶴 重粒子医科学センター, 准研究員 (60415411)
|
Keywords | マイクロビーム / 炭素イオン / 単色X線 / 放射光 / ヒト正常細胞 / バイスタンダー効果 / ギャップジャンクション / 細胞間情報伝達機構 |
Research Abstract |
平成18年度に確立したマイクロビーム細胞照射法を用いて、日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所TIARA重粒子マイクロビーム照射装置の炭素イオンマイクロビームと高エネルギー加速器研究機構放射光実験施設単色軟X線マイクロビーム照射に対するヒト正常細胞の生物効果(細胞致死)に関する照射効果とそのバイスタンダー効果誘導を調べた。ヒト正常細胞は、理化学研究所BioResource Centerより供給されたヒト胎児皮膚由来正常線維芽細胞を用いた。細胞致死はコロニー形成法による細胞の増殖死を検出した。炭素イオンマイクロビームでは前年度得られた実験結果を再現し、マイクロビーム照射群の細胞生存率は80-92%であった。また、照射時にギャップジャンクション特異的阻害剤を併用した場合は、生存率は100%前後であった。一方、単色X線マイクロビームでは、照射単独群およびギャップジャンクション特異的阻害剤併用群いずれの場合も生存率は100%前後であった。今回得られた結果のうち炭素イオンでは、細胞致死は炭素イオンが直接ヒットした細胞のみに生じ、非ヒット細胞には起こらない、と仮定すると、イオンが照射された細胞が0.08-0.18%しか存在しない細胞集団に生ずる結果として説明することが出来ず、非照射細胞の一部にも二次的・三次的な何らかのメカニズムによって生物効果が誘導されたと考えることが必要となる。このことにより、炭素イオン照射された細胞集団において細胞致死効果にバイスタンダー効果が誘導されたと結論する。また、ギャップジャンクション特異的阻害剤を併用した実験結果から、観察されたバイスタンダー効果の誘導にはギャップジャンクションを介した細胞間情報伝達機構が密接に関与していることが示唆される。一方単色X線マイクロビームでは炭素イオンで観察されたような生物効果のバイスタンダー効果が起こらず、バイスタンダー効果の誘導には、放射線の線質依存性が存在することが示唆された。
|