Research Abstract |
本研究では, DEP中から二種類のニトロフェノール(3-methyl-4-nitrophenol; PNMC, 3-phenyl-4-nitrophenol; PNMPP)を単離し,その生体への作用機序を内分泌撹乱作用を中心に解明した。以上の結果より, DEPから分離した二種類のニトロフェノールがエストロゲン様作用を有する事を初めて明らかにした。また, PNMPPがPNMCに比べて強エストロゲン活性を有する事実が判明した。 本年度は、PNMCおよびPNMPPがホルモン依存性乳癌および肺癌細胞増殖に及ぼす影響について検討した。初めに, PNMCおよびPNMPPの遺伝子障害性を検討する目的で, CHO細胞を用いたコメットアッセイを実施したところ, PNMCおよびPNMPPのいずれも遺伝子障害性は認められず, PNMCおよびPNMPPの発癌に対するイニシエーター作用は否定された。次に,エストロゲン反応性乳癌細胞株MCF-7と肺癌細胞株A549およびH1395を用いて,細胞増殖試験を実施した。その結果, MCF-7ではエストラジオール-17β, PNMC, PNMPPで増殖活性が認められたが, A549およびH1395ではエストラジオール-17β, PNMC, PNMPPを添加しても有意な細胞増殖効果は認められなかった。さらに,エストロゲンリセプター(ER)を介する転写活性の有無を確認するために,エストロゲン応答配列レポーターアッセイをMCF-7乳癌細胞株,およびERβが発現しているH1395肺癌細胞株を用いて行った。その結果, MCF-7ではエストラジオール-17β, PNMC, PNMPP添加で有意な転写活性を示し, H1395では, PNMCのみが有意な転写活性を示した。 以上の結果から, PNMCおよびPNMPPは,乳癌細胞に対しては腫瘍プロモーション作用を示したが,肺癌細胞への腫瘍プロモーション作用は示さなかった。また,本研究においてPNMCは, ERβに結合して転写活性を示す事実を明らかにした。
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