Research Abstract |
淀川中流域から取水する高度浄水処理施設を選定し,浄水処理過程におけるエンドトキシンの挙動を調べた。採水は冬季に計3回実施し,一般細菌数(SPC),従属栄養細菌数(HPC),全菌数(DAPI),総エンドトキシン,遊離エンドトキシンを測定した結果,着水井における総エンドトキシンの平均値は75.1(EU/mL),遊離エンドトキシンは38.7(EU/mL)であった。着水井の値を基に各プロセスにおける除去率を算出したところ,SPC,HPC,DAPI,総エンドトキシン,遊離エンドトキシンともに凝集・沈殿処理により良好に除去されることがわかった。急速ろ過プロセスにおける平均除去率は,総エンドトキシンで86.2%(78.1〜92.8%),遊離エンドトキシンでは79.5%(65.1〜95.5%)と若干低い値を示した。また,急速ろ過以後の試料ではその大部分が遊離エンドトキシンとして水中に残存していること,微生物の再増殖が起こりやすい状況にある試料では遊離エンドトキシンの比率低下が確認された。高度浄水処理水中には,約10EU/mLのエンドトキシンが残存していることが明らかになった。 一方,通常処理水および高度浄水処理水それぞれの供給区域において給水栓水中のエンドトキシン濃度を測定したところ,通常処理水のエンドトキシン濃度は1.48±0.69EU/mLであるのに対して,高度浄水処理水では9.1±2.4EU/mLと約10倍高いことが判明した。 さらに,昨年度調製した環境水の高分子分画および親水性有機物分画をヒト表皮角化細胞に曝露したところ,エンドトキシンを含む高分子分画曝露により細胞数あたりの前炎症性サイトカイン(IL-8およびTNF-α)分泌量が顕著に増大した。しかし,親水性有機物分画曝露では有意な変化は見られず、水中に残存する高分子物質が免疫毒性に寄与する可能性が示された。
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