Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 純 北海道大学, 農学研究科, 助教授 (00192998)
梅本 信也 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教授 (60213500)
大江 真道 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (60244662)
中山 祐一郎 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助手 (50322368)
山根 京子 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助手 (00405359)
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Research Abstract |
5月に研究計画検討会を開催し,研究内容を調整した。自生地では生育地のニッチ分析と遺伝分析素材を収集した。マレーシア,タイ,韓国,中国においてイネ,アズキ,ヒエ,オニユリ,タケ,ベゴニアなどの栽培植物の近縁野生種の自生状態を観察調査するとともに,分析用のDNAと種子およびさく葉標本を収集した。国内の生育地調査では,10年前の自生地を踏査し,植生変化を記録し,一部では種子を採集した。それぞれの野生種の生育地には明らかな生態的傾向があり,人為的撹乱に依存して生活する種では,植生構造の変化や近隣の場所への移動が確認された。分子系統解析では,ヒエ属,アズキ類,ワサビ類,ツルマメで葉緑体変異による分析を行ったほか,単一コピー遺伝子の塩基配列変異について集団遺伝的解析を行った。分子系統解析では地理的分布の違いを反映した分子系統樹が得られ,種や生物学的種の範囲の指標となる変異が検出された。ダイズでは栽培や適応に重要な伸育性および感光性に係わる遺伝子の候補遺伝子を同定した。有限伸育性をコードする候補遺伝子の場合,プロモーター領域を含む全長約4kbの配列に,有限伸育性を規定する配列と同一の配列を有するツルマメが認められ,ダイズにおける形質進化を考える上で興味深い。雑草イネではsh4遺伝子の塩基配列分析で脱粒性系統が栽培種と同じ変異を示し,日本の雑草イネは別の座の脱粒性遺伝子をもつと推定された。アズキ類では,分析した4種類の遺伝子間に異なった進化の傾向がみられ,とくにアルファアミラーゼ遺伝子は種分化を反映しない傾向を示した。東アジア原産の野生近縁種には自生地の生態的傾向に対応した多様な種内変異の局在がみられ,画一的な傾向は認められなかった。栽培種と近縁野生種の間には人的撹乱に応じて多様な出来事が蓄積していると推定された。文献調査を進めるとともに,タイで開催されたEconomic Botany学会においてアズキ類の遺伝的多様性に関する成果の一部を報告し,国内の学会において栽培種-雑草-野生植物の関係に関する研究成果を発表した。
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