2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18319002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Special Purposes
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
杉浦 省三 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教授 (40433239)
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Keywords | 環境負荷低減技術 / 低リン汚染 / 富栄養化対策 / 持続的水産技術 / 分子的診断 / 遺伝子発現 / 環境にやさしい資料 / 水産養殖 |
Research Abstract |
リンの吸収を司るトランスポーターをリン輸送担体(NaPi)という。NaPiは多くの生物種の消化管内に存在し、リンの充足度に応じてその遺伝子発現度が敏感に変化する。従って、その発現レベルを調べることで、その生物のリンの摂取状態を早く正確に診断することができる。また、このバイオマーカーを用いて、飼料中のリン含量を生物的要求量の最低レベルまで減らすことで、リンによる環境負荷を低減することが可能となる。 NaPi遺伝子の発現度を調べるにはまずその塩基配列を知る必要があるが、魚類の消化管のNaPi塩基配列は僅か4種類の魚で分かっているに過ぎない。本研究では18年度、新たに18種の魚類でNaPiの塩基配列を解明した。得られた塩基配列から系統樹を作成したところ、分子レベルでの近縁関係が判明したので、今後はさらに多くの魚種でNaPi遺伝子の単離が容易となるであろう。また、何度も試みたが、NaPi配列を単離できなかった種として、シジミ,アサリ,タニシ,スジエビ,ザリガニなどがある。このことから、軟体動物や甲殻類(節足動物)のNaPiは、脊椎動物のNaPiと相同性が低いことが伺える。貝類や甲殻類にも水産養殖上重要な種がいるので、今後これらの生物でも引き続きNaPi塩基配列を調べる試みが必要である。 飼育実験に関して(本学には魚類実験施設が無いので)当初の予定通り、飼育水槽の購入、配管等の実験施設の構築から始めた。現在アユの飼料リン要求量を、NaPi発現度から推定するための飼育実験を進めている。先の研究でニジマスにおいて、NaPiの発現がリン欠乏の初期段階でかなり高感度に応答したことから、同等のレスポンスが他魚種でも見込まれる。アユは重要な淡水養殖魚であるから、そのリン要求量を正確に調べることで、アユ養殖場から排出されるリンの負荷量を低減することができる。他の養殖対象種でも同様の実験を行う予定である。
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Research Products
(1 results)