2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18319002
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
杉浦 省三 The University of Shiga Prefecture, 環境科学部, 准教授 (40433239)
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Keywords | 環境負荷低減技術 / 低リン汚染 / 富栄養化対策 / 持続的水産技術 / 分子的診断 / 遺伝子発現 / 環境にやさしい飼料 / 水産養殖 |
Research Abstract |
リン酸トランスポーター(NaPi)の単離に関して,前年度成功しなかった軟体動物(貝類)のNaPiを単離することに成功した。しかし,甲殻類のNaPiについては未だ成功に至っていない。前年度単離した18種の魚類のNaPiに関して,系統的に大きく異なる3種の魚類(テラピア,ニゴロブナ,ニジマス)においてその組織分布を調べたところ,興味ある知見が得られた。低リン飼料によるアユの飼育実験に関しては、実験中に冷水病が蔓延し100%近い斃死率に至ったため,止む無く実験を中止した。飼育施設を消毒し再度実験を行ったが,再び冷水病に罹病し実験中止を余儀なくされた。従って,当初の計画を変更し,テラピアとニゴロブナを用いて低リン飼料の影響を調べた。低リン飼料による初期のリン欠乏に対して,NaPi-mRNAの発現応答は,ニゴロブナでは確認できたものの,テラピアでは明確な応答が見られなかった。慢性的なリン欠乏ではNaPiの発現応答はより不明瞭なものとなった。次に,慢性的なリン欠乏状態のニジマスにおいて,脂質代謝に係わる遺伝子発現を調べたところ,対照魚(リン欠乏でない)との間に明確な差異は認められなかった。しかし,リン欠乏と脂質の異常蓄積は予測どおり確認されたことから,他のメカニズムが脂質蓄積に関与していることが示唆された。 NaPiは多くの生物種の消化管等の組織に分布し、リンの充足度に応じてその遺伝子発現が敏感に変化する。従って、その発現度を調べることで、生物のリン摂取状態をいち早く正確に診断することができる。このバイオマーカーを用いて、飼料中のリン添加レベルを生物的要求量の最低レベルまで減らすことができ,リンによる環境負荷を低減することが可能となる。養魚場から周辺水域に排泄されるリンは日本国内だけで年間5000〜7500トンにもなる。この環境負荷を低減するためには、上述した環境技術が重要となる。
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Research Products
(5 results)