2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18320002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 哲哉 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60171500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大貫 隆 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90138818)
山脇 直司 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30158323)
黒住 真 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00153411)
門脇 俊介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90177486)
宮本 久雄 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50157682)
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Keywords | 宗教 / 時間性 / 超越 / 倫理 / イエス / ベンヤミン / 今 / 犠牲 |
Research Abstract |
初年度の研究成果の主要な点は以下2点である。 1.「メシア的時間性」としての「今」について 大貫隆の聖書学研究によって、イエスの生前の根源的経験とイエスの磔刑後に成立したキリスト教の物語の差異が明らかにされ、その中でイエスの「神の国」における時間経験が、<過去が現在に先回りして未来から現在に到来する>という形をもつ「全時的今」であることが明らかになった。この「全時的今」はいわゆる「永遠の現在」とは異なり、現代のW・ベンヤミンの歴史哲学における「今の時」(Jetztzeit)に近く、ベンヤミンの歴史哲学の背後に独自のイエス解釈が存在する可能性も高まった。この新しい知見は、さらにデリダ、アガンベンらの時間論との比較検討を進めることによって、大きく発展する可能性をもつ。 2.犠牲(サクリファイス)の観念による「超越」の「内在」化 第2次世界大戦中の日本のキリスト教、仏教、および靖国思想の重要資料を分析することを通じて、神や仏の「超越」の経験が、「自己犠牲」の観念を媒介として、世俗国家へと「内在」化されていくプロセスが明らかになってきた。この「自己犠牲」の観念が、キリスト教ではイエスの死後の「贖罪」信仰の成立により、また仏教では「捨身飼虎」など釈迦の本生譚に見られる多くの説話の伝承により、キリスト教や仏教の伝統に深く根ざすものであることも判明した。宗教的な「超越」の経験を、いかにして「犠牲」の論理から解放するかを問うことの必要性が明らかになった。
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