2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18320002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 哲哉 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60171500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大貫 隆 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90138818)
山脇 直司 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30158323)
黒住 眞 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (00153411)
門脇 俊介 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90177486)
山本 巍 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (70012515)
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Keywords | 宗教 / 倫理 / キリスト教 / ベンヤミン / 神的暴力 / キルケゴール / 決断 / 犠牲 |
Research Abstract |
昨年度の研究で課題となったベンヤミンの歴史哲学とイエスないしキリスト教との関係を検討し、従来ユダヤ神学の影響だけが議論されてきたベンヤミンのメシアニズムをイエスおよびパウロのキリスト教の視点から読み解く必要が一層明らかになった。ベンヤミンの「歴史哲学テーゼ」に登場する「せむしの小人」がパウロではないかという大貫の仮説が検討され、それを確認するためにも、初期ベンヤミンの「暴力批判論」に登場する「神的暴力」とキリスト教との関係の究明がポイントであると暫定的な結論に至った。 ベンヤミン「暴力批判論」は暴力と法および正義との関係を追究しつつ「神」の「正義」にかかわる「神的暴力」の概念を導入したもので、ここからも、本研究のテーマの一つである宗教における倫理の問題系との関係が浮上してきた。昨年度に問題化した「犠牲」の論理との関係で、ベンヤミンが「犠牲を要求する」「神話的暴力」と「犠牲を受け入れる」「神的暴力」を区別する場合の後者の「犠牲」の意味を、宗教的経験の具体的な場面でどう解釈できるかが重要な課題であることが明らかになった。 今年度の大きな成果は、キルケゴールにおける「信仰」と「責任」の逆説の意味を、「犠牲」の問題とも絡めて新たに照射する可能性が開けた点である。キルケゴールはカント的およびヘーゲル的な「普遍性」の倫理を「信仰の騎士」の立場から超越するが、それはシュミットやベンヤミン、さらにデリダやアガンベン等、現代の決断主義の思想系譜の先駆と考えられること、しかも、キルケゴール的「決断」は単に「倫理」を放棄するのではなく、従来軽視されてきた『キリスト教の修錬』等の著作を精読すれば、「普遍的」な「倫理」と化した現代のキリスト教会を「勝利の教会」として批判しつつ、単独者のつながりあう「闘う教会」の理念を通して、現代批判の新たな「倫理」を提起していることが明らかになった。
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Research Products
(5 results)