2006 Fiscal Year Annual Research Report
「いのち・からだ・こころ」をめぐる現代的問題への応用現象学からの貢献の試み
Project/Area Number |
18320003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榊原 哲也 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (20205727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 慶典 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (10211260)
谷 徹 立命館大学, 文学部, 教授 (40188371)
浜渦 辰二 静岡大学, 人文学部, 教授 (70218527)
村上 靖彦 日本大学, 国際関係学部, 准教授 (30328679)
和田 渡 阪南大学, 経済学部, 教授 (80210988)
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Keywords | 脱-構築 / 精神医学 / ケア / 自閉症 / 発生的現象学 / 脳科学 / イナクション / 舞踊的身体 |
Research Abstract |
研究分担者全員で第1回ミーティングを開き、研究遂行の方向と具体的手順を確認した上で、本年度は、相互に連携しつつ、まず各自が「いのち・からだ・こころ」をめぐる現代的問題に対する応用現象学的研究に取り組んだ。榊原は、看護ケアにおける「いのち・からだ・こころ」の諸問題に取り組むために、「病い」の体験に注目してケアの現象学の見取り図を描き、かつ研究全体を統括した。和田は、こころの問題に対する自然科学的なアプローチに基づく成果を、現象学に固有な1人称的な反省の観点からの考察と比較検討した。浜渦は、ケアの現象学についての考察と並行して、精神医学と現象学を繋ぐ新たな応用現象学の道を探るため、脳科学と現象学、ナラティブとパースペクティヴといったテーマで考察を行った。谷は、一方で生と死の問題を現象学的観点から扱った論文によって現象学の新たな次元を開く試みを示し、他方で日本における精神医学と現象学的哲学の関係を扱った論文によって現象学の応用の可能性と新たな問題点を指摘した(両論文はドイツで公刊された)。村上は、国立成育医療センターにおいて、自閉症に関するフィールドワークを行った。とくに医師・心理士と共同で、自閉症の自己意識についての質的研究を開始した。山口は、認知科学と現象学の関係をめぐり、B.リベットの"Minde Time"の考察をフッサールの時間論に批判的に統合する論文を執筆し、「時間と自由」の問題を探求し、フッサール発生的現象学における倫理の構築を試みた。野家は、「こころ」の知的機能としての「認知」を経験の全体構造において考察するための方法論(「自然化された現象学」)の確立を目指した。斎藤は、生命(いのち)・身体(からだ)システムから創発的に出現した心(こころ)システムに特異な特徴(ないし可能性)としての「他者の受容」の問題系を、現象学の一つの徹底形態として倫理=政治哲学的問題系へと橋渡しすることを試みた。宮原は、時制をめぐる認知言語学の理論とフッサールの時間意識の分析での図表表現が酷似していることを発見するとともに、その理論的背景を分析した。貫は、舞踊(ダンス、バレエ、舞踏)について、舞踊者ならびに、それをみる観者の身体のあり方の現象学的解明をおこなった。 またこれらの研究の相互連携の上に、海外の研究者と国内の専門家を招き、応用現象学会議を開催した。
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Research Products
(11 results)