Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 澄夫 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (30097282)
天野 正幸 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (40107173)
高山 守 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20121460)
榊原 哲也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (20205727)
鈴木 泉 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (50235933)
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Research Abstract |
平成19年度は,全体として文化や規範といった制度負荷的な場面でさまざまな仕方で機能する因果性と志向性の絡み合いについて研究を遂行した。 一ノ瀬正樹は,「曖味性」の問題に関して,確率的因果の考え方を適用する道筋についての論文を発表した。また,自由と責任の問題に関して,修復的司法への道筋に向けての議論を発表し,一定の前進を果たした。松永澄夫は,環境問題を事例に,地域の文化,普遍的理念,科学的知識の三者を摺り合わせて,いかにして政策が生まれるべきか,追求した。天野正幸は,アリストテレスの倫理学を,特にアクラシア論,実践三段論法。快楽論を中心に研究した。高山守は,必然性と両立しうる自由を,「十分な理由(充足理由)」の欠落という観点から捉え,そうした自由の内実をシェリングにおける「善と悪との能力」という観点に即して論究した。榊原哲也は,フッサール現象学の「志向性」概念について考察し,他者経験における「志向性」および「動機づけ」の機能を明らかにするとともに,フッサールの思想の展開全体を見直す作業を行うた。鈴木泉は,中世後期から近世にかけての特に「因果性」概念の意義を,マルブランシュとスピノザに探り,前者において因果性が説明概念へと変質することの知識論的意味と,後者の特異な内在的因果性概念の存在論的意味をそれぞれ解明した。門脇俊介は,単著『現代哲学の戦略』を公刊し,現象学的視点と認知科学的視点とを交差させつつ,制度負荷的な因果性の働きを志向性の関係へと包摂する視点を模索した。中真生は,悪と苦しみにおける「志向性」の研究を進め,身体における根本的志向性の次元と日常的な因果連関とは異なるレヴィナス独自の「意味」概念に関する考察を深め,博士論文に結実させた。吉由聡は,自己についての「知識」における「志向性」の研究を進め,特にフッサール現象学における「自己触発」概念を手掛かりとして考察を深めた。
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