2008 Fiscal Year Annual Research Report
世界の公教育で宗教はどのように教えられているか-学校教科書の比較研究-
Project/Area Number |
18320019
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
藤原 聖子 Taisho University, 人間学部, 教授 (10338593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 直樹 大正大学, 文学部, 教授 (10384679)
弓山 達也 大正大学, 人間学部, 教授 (40311998)
宮崎 元裕 京都女子大学, 短期大学部・初等教育学科, 講師 (20422917)
星野 英紀 大正大学, 人間学部, 教授 (00054669)
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Keywords | 宗教学 / 教育学 / 宗教教育 / 比較教育学 / 教科書 / 価値教育 |
Research Abstract |
10カ国(イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、トルコ、インド、タイ、インドネシア、フィリピン、韓国)の学校で使われている宗教の教科書(公立学校に宗教の授業がない国については、歴史や公民等の教科書の該当部分)の翻訳を完成し、それぞれに対する解説論文を加えて、電子書籍の形態で出版した(ただし、インドについては版元から翻訳許可をとることができなかったため、研究論文のみを収録した)。 翻訳した教科書を一次資料とし、各国の宗教教育制度の分析、それぞれの教科書の成立過程、内容(各宗教はどう描かれているか、どのような教育上の工夫が見られるか、さらにその効果や問題点はどうか等)、さらにそれらと各国の政治的・宗教的状況の関係などの分析を進めた。その成果は翻訳教科書に加える解説論文として銘々まとめ、また研究会で共有した(20年度はとくにフランス、ドイツ、フィリピン、日本のケースについて重点的に研究した)。 結果として、どの国でも公教育において宗教を記述する上で、国家統合と多文化・民族状況への配慮という2つの目的をともに満たすことが欠かせなくなっていること、ただしその方法が国ごとに、あるいは同一の国でも地域や宗派ごとに異なることがわかった。いいかえれば、開発途上国はナショナリスティック、先進国はマルチカルチュラルという2分法にはあてはまらない事例が多々見出された。また、各宗教のもっともベーシックな説明すらも、国によって大きな違いがあることがわかった。 それにより、日本の公教育における宗教の一般的説明が、ある種の宗教観・歴史観・社会観に規定されていること、そのことを教育者はもとより、宗教学者もこれまで認識していなかったことを示唆している。この知見により、日本の倫理、歴史教科書の作成に対して具体的な提言が可能になった。また、この翻訳プロジェクトは海外でも反響を呼び、トルコでは新聞により報道された。
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