2006 Fiscal Year Annual Research Report
幕末明治初期の日本文学と「民衆」思考に関する総合比較研究
Project/Area Number |
18320040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
キャンベル ロバート 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教授 (50210844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 悟 実践女子大学, 文学部, 教授 (50178729)
鈴木 俊幸 中央大学, 文学部, 教授 (00216417)
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Keywords | 日本文学 / 出版史 / 民衆啓蒙 / 近世文学 / 近代文学 / 日本思想史 / 漢文学 / 小説 |
Research Abstract |
本研究では、文学と「思考」を取り結ぶエリアとして、4つの柱を立て、文献調査と具体的な考証を加えながら、その成果として幕末明治初期の文学史に新たな展開を見出すことを目的に掲げている。4つの柱とは、1.出版と庶民教化.2.寓意言説の展開 3.都市風俗誌〔明治版繁昌記モノ〕の系譜 4.音曲と思考、である。 今年度は、それぞれの課題について調査・研究を行いながら、一方では多角的で大規模なワークショップを実施した。 出版と庶民教化および音曲と思考を中心に、国内で文献調査を行い、データの整理と処理・分析に着手した。その成果の一部を、『電子版 黒木文庫』(東京大学情報基盤センター 公開協力)に盛り込むことができた。 年度末には、「出張」型の合同公開ワークショップを計画し、海外の研究機関において、海外の協力研究者たちといっしょに「思考する民衆」(英語題名「Plain Thinking Folks」)をテーマに実質的な発表・討議の場を設け、成功裏に実施した。このワークショップは、アメリカ・ハーバード大学ライシャワー研究所と東京大学UTCPが共催という形で立ち上げ、同研究所において、東大からはキャンベル、ハーバード大からはアダム・カーン准教授が企画・実施を担当し、日本とアメリカの研究者合わせて14人で2日間発表・討議をした(2007.3.20-21)。ワークショップの構成は、「様式の共同体」「ことばの政治学」「道徳と創造性」「自学する読者」「教化と通俗文化」に分れ、その成果について今後公刊すべく実質的な検討に入っている。 本研究においては、従来のジャンルに拘泥せず、できるだけ当時の文学・思考状況に即して「教化」および「啓蒙」と文学が交通する領域-通俗歴史書、地誌、小説、挿絵、紀行文、新聞投書、音曲(音楽)、身体論、学芸論など-を分析することによって、近世から近代への移行期を浮き彫りにしようとするものである。今年度は複数の問題軸を調査しながら掘り下げ、また同時に国際的な学術交流を契機に大きな枠組みを具体的に探ろうという、その第一歩に踏みだしたことが大きな成果だったと言える。
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Research Products
(3 results)